其ノ四百二十九  九時間の、島とメバルと
これほどのライズは初めて見た。何を捕食しているのか?途切れずライズリングが海面に広がっていた。
インターミディエイトを巻いたリールは車に置いてきた。背中のバッグにあるタイプllを巻いたリールでやってみる事にした。
ノーウェイトのフライをキャスト。ライズが取れたかどうかわからないが、すぐにいい手応えが伝わってきた。
まるで春のような海。もう穏やかな気候でもへっちゃら。
タイプll がマッチしているかどうか。しかし数匹のメバルが釣れて、とりあえずこのままやってみる。
何投目かの時、ドンっと重い引き。11ftのロッドが今までにないくらい曲がった。
(これはでかい!)ラインを手繰り、あと少しというところでフッと軽くなった。
(ば、バレた〜っ!)
海で数が釣れるようになってきてから、バラしの回数も増えてきていた。しかしここでバラすか〜?

タイプll で釣った一番の良型メバル様。
ライズが止み、表層にメバルの姿が見えなくなったのを機に、僕はラインをタイプlV に変えた。フライもビーズヘッドのシラスファイバーパターン。初釣りではアジがかなり釣れたし、去年は何度もアナハゼ祭りが開催された。しかしこの日はメバルオンリー。チビの中に数匹良型が混じり、釣りのリズムは悪くない。あのバラしさえなければ。

朝から霧がかかっていたが、やや晴れてきた。無風、温暖、確か最高気温は12度までいくと予報では言っていた。実際着込んで来たから一枚脱ぎたいところだ。
潮流はやや収まりつつある。上げ七分からのスタート、そろそろ満潮のようだ。
「海でフライをやっとるのを初めて見た」と、釣りを終えて帰る釣り師が話しかけてきた。
「わしは川もやるけ、川ではフライは見た事あるが、海では見た事ない」
「やっている人は居る事は居るんですが、僕も自分以外でやってるのは見た事はないです」と言葉を交わした。
その釣り師が帰った後すこしして、アタリがぱったり止まった。
ブルーバックの精悍メバル様。
七つの橋の島に来た時には、ここのところ四番目の島が調子がよく、そこでその日の釣りを終えることが多かった。今回は四番目の島のアタリが止まったから、ひさびさに三番目の島に寄ってみた。
防波堤や浮き桟橋に釣り人は多かった。僕は空いたスペースでキャスト。一投目から釣れた。そのあとも連続で。
周りの釣り人は釣れていないようだったが、僕を気にする様子はなかった。
日没後のメバル様。暗いのにフライがよく見えますね(^^;)
辺りは薄暗くなった。もうすぐ干潮だ。朝島に着いてから九時間が過ぎようとしていた。昼飯を食べ損なって朝食以降は何も口にしていない。
周りの釣り人は少しづつ帰り始めた。その中にさっきの釣り師がいた。
「最初の港、どうやった?」
「あの後、釣れなくなりました」
釣り師は笑って帰って行った。僕は止めるタイミングを逸して、九時間振り続けたロッドをまた振り始めた。
暗くなるまでやったけど、これでまだ18:30です。