其ノ四百三十二  強風と招かれざる客
島への橋を渡る時、これはダメだ、と思うほどの木々の揺れ方に、ようやくかなりの強風だとわかった。
毎度の低温対策の方は、これでもかというほど着込んでいるからばっちりだが、強風だけはいかんせんなんともしがたい。
そしてついに今年になって初の強風(暴風)に当たってしまったわけだ。
僕は当然風裏を狙って釣行先の港を探り始めた。
2018年初の暴風。こんなだと普通釣りはしません(^^;)
「確かお会いしましたよね」と僕が言うと、奥さんのほうがにっこり笑った。去年の最終釣行のひとつ前でこの港で会った年配のご夫婦釣り師にこの日も会った。
「風が強いからどこへ行こうかと考えてここに来ました。でも風強いね」と旦那さんの方が言う。その通りだった。風裏だと期待してきたが、来る途中の暴風のエリアとほとんど変わらない。防波堤の一段下だと風は来ないが、そこからだと防波堤外洋側にキャストできない。
キャストしたい方向(防波堤の海側直角方向)からは強烈な向かい風、全く前に飛ばない。それにしても二月ってこんなに風が吹く月だったっけ?
強風の中、飛ぶ(飛ばされてる?)カモメ様。 この港で相性のいいフライ。
「釣れるか? ほかの人はどんな様子?」と不意に声をかけられた。
新たな釣り師が聞いてきた。ほかの人って、なんで僕に聞くのか? 僕はわからないと言って海に向き直った。
ご夫婦釣り師のほかに若い釣り師も二人来ていたので、そこへ質問好きな釣り師は向かった。そしてなにやら話し込んでいる。
「なんか取材できることありますか?」とまたまた声をかけられた。この人は・・・。
空腹に耐えきれず、風止み待ちを兼ねて釣行ランチ(^^)
「ないない」と言って僕はその人をいなした。確か数年前にも別の島で声をかけてきたローカル釣り雑誌の人だ。その人も若い釣り師の所へ行き、話し込んで写真も撮り始めた。
風は全く弱まる気配がない。僕は防波堤の上に立ってキャストを試み、また降りる、を繰り返していた。時折ご夫婦釣り師との話しを交えながら、僕は風が弱まるのを待った。弱まる保証はどこにもないのだが。
強風は海面も海中も引っかき回している。キャストができないだけでなく、なんとか少しは飛ばせたとして今度はアタリがとれない。
質問好きの釣り師が帰ろうとしていた。途中僕のラインバスケットを覗き込み、
「糸をもつらしたんか?」と言ってきた。僕は黙ってやり過ごした。
すぐにローカル釣り雑誌の人もやってきて、「がんばってください」と言って帰っていった。
風は強いし人はよく来るし、なんとも落ち着かない。しかし本分は釣りなんだから、なんとしても釣らないと。
止まない風はない!? と思う(^^;)
「帰ります〜」ご夫婦釣り師も帰られるようだ。若い釣り師達も帰ったので、あれだけ人がいた防波堤が僕一人になった。
一段下だと風はほぼ吹いていない。上はどんなだろうと僕はまた防波堤上に上がった。
「!」なんと、風が弱まっている。まともにキャスティングできる。僕は間髪入れずキャストした。一投目でググッときた。
そしてまた、すぐに強風が吹き始めた。
なんと一匹までが遠いことか。