2019 釣乃記
第拾四話  真夏日襲来、ヤマメ翔ける
思った通り水は減っていた。
月曜日にまとまった雨が降ってから、中四日。やっぱり水位は減りきってしまうよな。
ただ来たからにはやるしかない。僕は最初の本流ポイントへ向けて土手を降りた。

減水は予想できてもこの日ここに来たのには理由があった。
この日が五月最後の週末、来週末は鮎が解禁になっている。
思うようなポイントで釣りができなくなると思ったからだ。
カキツバタも予想外の真夏日にしおれ気味。
ぎりぎりでフッキングしたヤマメ様。
この日、全国で真夏日になる予報。熱中症への注意の呼びかけがなされていた。
まだ五月なのに30度越えは、暑さに慣れていない体には堪えそうだ。

減水の本流、狙いのポイントでは出ない。ここには良い型が居るはずだが。月曜日の雨で移動してしまったか?
何度か反応があったが、ヤマメっぽくない。ハヤかも?
少し上流側の激しく波立っている場所を探ってみた。
一投目、流しきる寸前、ゴゴンっときた! 白い魚体がうねり次の瞬間、バレた!!
昼飯前の空振りのヤツだ。またまたやってしまった。

おそらく一番気温の高い時間帯。上流域へ移動中、川沿いの広い場所に車が停まっていた。
通過際、(Tさんだっ!)とわかった。何年ぶりかでの再会だった。
ひとしきり話しをする中で、今年はアベレージサイズが例年よりもいいとTさんが言った。
(ああ、そうか!)そういうことなのか。僕は今年のシーズンはまずまずの型がほぼ毎回釣れていたのを、自分の釣りのスキルが上がってきたと思っていた。キャスティングやドリフトは相変わらずパッとしないが、それでもそれなりにはやれていると思っていたし、なによりどの時期にどこのポイントが良型が着く、というのを察知する能力が向上したと思い込んでいた。
多少はそれもあろうけど、川に居るヤマメの平均サイズがいいということもあるよな、当然。
リバーサイドもぐもぐタイム。スープカレー、絶品。
本流育ちのヤマメ様、美しいです(*^^*)
最後のひとつ前のヤマメ様。確かに平均サイズは上がってる。
川風が心地よい。食後に例によって昼寝を決め込んだ。
数分、うとうとした。目が覚めるとなんだかスッキリしている。これはいいかも。

先程出て空振りしたヤマメ。小一時間が経ったが果たしてどうか?
さすがに暑くなってきた。昼飯&昼寝の場所は木陰だったが、空振りポイントはギンギンに陽が当たっている。
(ここはウエットだ)と僕は直感でそう思った。
速い流れ、CDCのドライフライを見失った。いや、違うか? ロッドをあおった。グンっ!と重量がのしかかった。
急流に乗ってヤマメは下っていき、僕は耐えながら緩めながらなんとかヤマメを岸際へ寄せた。細いパーマークの本流で磨かれた魚体がネットに横たわった。しばし見惚れる。
そして僕はそこからさらに本流筋を下流へ下った。速く幅の広い流れでドライフライをダウンクロスで流すとバシュッと出た。空振り。やってしまったな。
ほかのフライを試すにしても、すぐには出ないだろう。かなり暑くなってきたしバテ気味だったので、僕はここの河原で休憩と昼飯をとる事にした。
ついこの前まで新緑がどうこうと言ってたのに、緑がすっかり濃くなった。
Tさんと別れ、僕は更に上流側でロッドを振った。
しばらく反応がないまま釣り上がった。中くらいのプール。流れのど真ん中、フライが消えた気がして合わした。ぎりぎりでフッキング。平均サイズちょっと超え。
更に上流域へ。小プール、また出た。平均上。いやいや、これはやっぱり僕のポイント察知能力は上がっているのでは?
次のポイント、ここも出る・・出た! しかしあっさりバレてしまった。うむむ、釣り上げる能力はまだまだかな。