2019 釣乃記
第拾七話  増水しない川へ
「表層を流れるだけの降り方もあるで」とYさん。
確かにそれはよく聞く。先週の雨がそうで、金曜日にかなり降ったのに日曜日は平水。
「今までが降ってなかったから、ひどい増水にはならんよ」と言うYさんの言葉に、僕は翌日の日曜日の釣行を決めた。
この日は釣り具屋のあと、会社のチームの出場する9人制バレーのV9チャンプリーグの試合の応援に行った。
ストレート勝ち。なんだか僕の釣りにも弾みがついた。
虹も出て、こりゃあ今日はいいはずでわっ!?
「フライなら下流の開けた場所の葦際を狙えば?」と助言をもらった。この人はフライを知ってるな。
雨が落ちてきた。レーダーで見ると強い雨雲が近くにいる。僕は二ヶ所ほど開けた場所をやってみた。水位は高いが雰囲気は悪くない。しかしフライに反応なし。雨足が強くなり、僕は車に戻り思案に暮れた。
(こうなったらゴギをちゃちゃっと釣って帰るか)
僕は山を越えて別の水系を目指す事にした。
三ヶ所目の支流、やはり増水はしているが、わりとポイントがはっきりしている。
僕はここもニンフを投げ入れた。去年はこの谷で数年ぶりにゴギがよく釣れた。いないはずはないんだが。

出ない。ゴギをちゃちゃっと釣って帰る、だなんて思って、ゴギが怒ったのかも。全くゴギの気配もない。
と、踏み出した一歩が予想外に深く、前のめりにこけてしまった。ずぶ濡れになった。
今季初の雨中釣行。ってか、増水が激しくて釣りできん(>_<)
すやすやタイムで気持ちをリセット。ふて寝じゃないよ。
もう帰ろうかと思った。今日はもうダメだ。雨が落ち出した。
不意に帰るルートの途中に支流があるのを思い出した。
途中だし気を取り直して、ちょっと覗いてみることにした。その川、道から見える流れは、なんと増水していない! どういう加減なんだ? 僕は勇んでこの支流の良さそうな区間へ向かったがそこには釣り師の車。
やむなく別の区間でドライフライを投げてみた。
その一投目、フライの落ちた先にバシュっと飛沫があがった。
このヤマメ様に救われました(^^;)
上流の細い流れでもこのありさま。
散々川を変えて、最後に行き着いた幸運。
カップめんとカレーがここのところの定番ランチ。
1時間かけて別の支流へ入渓。スッと陽が射したがすぐに曇った。深い谷なので薄暗い。ここも同様に増水していた。少しでもゆるいポイントへニンフを投げ入れてみるが、なんだかやる前からダメだと思っているから釣れる訳がない。
あまり奥へ入るとクマが怖い。僕はこの支流も見切って戻る事にした。次に目をつけている支流はかなり有望だ。川沿いに遊歩道があるからまあまあ怖くない。問題は先行者が居るかどうかだ。前日はほぼ雨が降り続いたので、この日に狙いを定めた釣り師は多いはず。そしてこの増水でもなんとか釣りになる場所はと言うと・・・。きっとみんな考える事は同じはずだ。
白い! 川が白い。川面が激しい波頭で白く染まっていた。僕は一気に気持ちが萎えてきた。相当の増水だ。
ロッドを出そうと言う気になれない。上流域の橋の上から川を覗いた。すごい流れだ。
と、餌釣りの釣り師が川から上がってきた。
「先週の雨で渇水が解消されたから、今週の雨で増えたな。」と餌釣り師。
Yさんとは違った論法だが、いずれにせよ、現実は目の前にあった。