2019 釣乃記
第六話 後戻りしない春へ
もしかしたらと予想していたが、思った通り水位は低かった。
しばらく雨が降っておらず、解禁一回目の時くらいにまで、水は落ちていた。
一回目の時はそれが功を奏し、まずまずのヤマメを手に出来た。しかしそれからひと月経っているから、同じ水位でも意味するところは違ってくる。
ようやく暖かくなる予報とこの水位、どちらがどう影響してくるのか?
存在感たっぷりの桜。ここまで満開なのを見るのは初かも。
今シーズン一番のサイズもやや痩せ気味(^^;)
水しぶきも冷たくないっ!
安易なポイントのすぐ上流、かすかな形跡を残してフライが消えた。合わすと重いっ! と、あっさりバレた。なんで〜。
確率の問題だろうけど、良く釣れるとバラす回数も増える。確率論が当てはまらないのは、バラすヤマメに限ってでかそうだったと言う事だ。
昼食をとり、少し昼寝。渓流解禁後初のすやすやタイム。これが気持ちよかった。今までは寒くて昼寝どころじゃない釣行が続いていたから、気持ちよさも増幅する。暖かくなって、ホントに良かった。
少し風が出てきて、起き上がった。はらはらと桜の花びらが風に漂っていた。
よく歩いた。体力もやや落ち気味なのも自覚している。
疲れたと感じたのはそういう理由もあるだろう。でも違う感覚もおぼえた。
バラしもあったが、そこそこの釣果に満たされていた。それが追い詰められる緊張感を緩めた。暖かくなったこともあって気の緩み、疲れを感じさせたような気がする。ま、それは贅沢な疲れと言うことかな。
最後に選んだポイント。一番良い場所に最初にキャストした。
次のライズポイントまでの間の区間、ここぞと思うポイントで出る出る。
何匹かバラしたが短時間でかなり釣った。ここまで活性が高いとは思わなかった。よしよし。
二番目のライズポイントも沈黙していた。まずは手前にちょっとフライを落としてみる。
と、ボソッと出た。合わすと掛かっている。ヤマメだ。
なんだかわからないが、安易な場所で釣れてしまった。これもまだスレていないシーズン初期だからこそだな。
四月最初の週末、新元号の発表で沸いたが、令和最初のヤマメは五月になってからか。
僕はここまで温存しておいた流れを目指した。きっとライズしているはずだった。
最初のライズポイント、ハッチはあるが水面は静かだった。
ドライフライをキャスト。一投でチビヤマメが出た。うん、君じゃないんだよなあ。
そのあとも同サイズ。元気だね、チビヤマメ君。
今年初マエグロ。そういう季節になってきた。
コンディションのいいヤマメ様(*^^*)
この日一番期待値が高いポイント。水位が低いのはどうにもできないので、プレゼンテーションに細心の注意を払う。
ティペットは7X、フライは#18、バックキャスト一回でシュート。
もわっっと出た! あ、でかい!! 合わすと何の抵抗もなくラインは後方へ。食ってなかったのか? 反応は一度きり。この日はもう出ないだろう。
なんだろう、良く釣った。まあまあサイズも。でもなんか疲れたな。
川沿いの神社の桜を見上げて。
わさっと出た。合わすとヤマメがジャンプ! 二回、三回!
と、そのヤマメがこちらに向かって突進してきた。ラインが緩む。バレるバレる!
川沿いの桜はどれも満開で、これだけこの川筋で桜の良い時期に当たったのは初めてかも知れない。
最後のヤマメをすくった手応えが手にあり、少し汗をかいたのを自覚して、僕はきっともう冬に後戻りはしそうにないと思った。