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2023 釣乃記
第拾捌話 それでも釣りに行く
流れの強めのむつかしげなところを流すと、ヌッと魚体が現れた。合わすが空振り。フックは当たっていない。
フライの流れるのが早過ぎるのかもしれない。僕はフライの水気を取りながら、上流から流し込もうと思った。 流すとまたヌッと出た。合わす! 今度は口にかすってしまった。もうダメだ。 それにしても涼しい。というか、肌寒いくらいだ。川に着いた時、気温は20度だった。 毎年のことだが、八月末までで西中国山地の渓流は禁漁になる。この週末が僕の最後のチャンスだが、その数日前の水曜日から金曜日にかけて雨になる予報が出た。最後の最後でチャンスがくるっと、僕は期待を膨らませたが、実際にはその雨予報は徐々にしぼんでいき、水曜日はちょっと降ったが木金はにわか雨程度だった。
釣りエリアの山間部なら雨雲レーダーに映らない降雨があったかもしれないが、降ったとしてもお湿り程度だろう。 金曜日、仕事の帰りにmaekawacraftの工房に寄った。暑いのう、とM川氏とお決まりの挨拶。予報は期待外れであまり降ってないが、最後だし行ってみようと思っていると言うと、「ビシッと言わせてきんさい」とM川氏。ビシッとね〜。 今年は北海道や本州各地で釣りをしたM川氏だが、地元河川はやっぱり別で思い入れがあるという。そりゃそうか。でも各地と比べると環境の差は歴然で、西中国山地の厳しい条件を改めて再認識する釣り旅でもあったようだ。
水位としては、やっぱり少ない。わかってたろ?(^^;)
ああ、釣れてくれたことに感謝せねばね(^0^;)
せめてあと一区間やろうと、僕は移動した。次に良さげな場所はルアーマンがいた。さらに移動すると途中で別の釣り師。
だいぶ上流域の岩場の多い場所に降りた。ポイント的には良さそうだが、投げても投げても反応がない。すっかり抜かれてるっぽい。禁漁前に釣り師はスパートをかけ、川は漁期の役目を終えてしまい支度をしているように思えた。 頭のはるか上の方でゴロゴロと雷の音が響いた。 僕はその音を合図にラインを巻き取った。 そして週末土曜日、せめて朝早くなら可能性は高まると、僕は5時起きで川に向かった。
朝のうちは何匹かフライを追ったが、フッキングしない。 水はカラっからの渇水という程ではないが、ヤマメの活性のギヤが一段上がる程の水位ではない。 ポイントを見逃さず、丁寧に流すことを心掛け、ヤマメに追わせることはできたが、食わせるところまで行かない。 もうちょっと水が多ければ、きっと釣れている。それはわかっていて、釣りに来たんじゃないか。
入道雲が雷雲にのまれていく。
目の前を飛ぶブヨはちょっといるがアブはいない。そして蜘蛛の巣が全くない。八月下旬は毎年そうだ。自然は夏の終わりをいち早く察知している。
しかし、時間が経つとともに日差しも川に届き、ついでグイグイと気温が上がってきた。朝の快適な涼しさは微塵もない。顔から汗が流れ始めた。 (ここももっと水があれば。ここももっと深ければ)そんなことばかり考えるようになった。 すると急にロッドが引き込まれた。気づくと魚が掛かっていた。
ハサミをかかげてサワガニさんは臨戦体制。
ラストもぐもぐタイムはサッポロ一番塩。途中から陽がさしてきて暑〜(^^;)
暑くてもキノコは出てくるんですね。
スレだった。フライに出たのも気が付かなかった。なんだそりゃ。
その先でも出た。アゴに掛かっていた。いずれも小さいが、反応があるだけマシだ。 スレだとしてもよく掛かったと思うが、これが増水の条件の良い時だったらここまで丁寧にやってないだろう。 予定の場所まできて僕は一旦川から上がった。まだ10時だった。 もちろんもっと数もサイズも欲しいに決まっているが、日差しはどんどんキツくなる一方だ。 |