F.F.雑感
其ノ五百九十七  15分の川の困難
以前から気にはなっていた川。僕の家から道がすいていたら車で15分かからない。
以前に釣り仲間のKさんがいいよって言っていた川だ。近いから逆に行かないというのは良くある話で、自宅から徒歩圏内でチヌの釣れる川があっても行かない釣り仲間もいる。
それこそ僕の家からもっと近いチヌの上がってくる川はあるが、あまりに近すぎて行ってはいない。車で15分なら程よく離れているから、行ってみようかと前から思っていた。
Tさんと合流し、潮の満ち上がりとチヌの遡上に合わせて僕たちも上流へ向かった。町の道路の橋をいくつかくぐりJRの鉄橋もくぐる。土曜日だから学校が終わり下校の学生たちが川沿いの道を自転車で通り過ぎる。町の真っ只中の釣り場だ。ここまで人や車が近い川は初めてだった。
上流に上がっても僕は釣ることはできなかったが、Tさんは二匹釣った。さすがだ。下げ潮に変わって釣りくだったが、下げではチヌは一気にくだってしまうようで、魚影をみることすらなかった。

七月に入ってからは別の川でチヌは釣ったが、15分で行けるあの川も気になり続けていた。それで七月二週目の週末にまた行ってみた。今回もTさんが一緒だ。潮は中潮で前回より下がる。僕たちは河口付近に車を停め、歩いて移動しイケそうな場所で川に降りた。
この日は前回とガラリと変わって、魚影が見えない。風も強く波立っている。おまけに僕は前日に渓流に行ったので、持ち物の入れ替えの確認が不十分で偏光グラスを忘れてしまった。余計に見えない。
満ち上がりの流れが川底の高低があるところで変化している場所。たら〜っとした流ればかりのこの川では貴重な変化があるポイントだ。いるならここだとイメージしてフライを送り込むと、くくっくーっとラインが引っ張り込まれ、掛かった。
フライフィッシャーと下校中の学生。その対比(^^;)
試しに行ってみるとふとSNSで言ったことから、Tさんとその川への初挑戦になったのは、六月下旬のことだった。
朝の干潮、小潮でそんなに落ちない潮の日、川の近くのコインパーキングに車を停め、川へ降りた。河口から数百メートル上がったあたり。水深がちょうどいいくらいで、すでにチヌの姿が見える。
ゆっくりとした静かな流れで、ラインが着水したらチヌは散ってしまう。散らさず投げれてもリトリーブすると無視か散るかだった。
そうこうしていたらTさんの姿が上流に見えた。
焦げ付く暑さ。町中の川は町中と同じ気温だ(←当たり前((>▽<;)
この日は前回のようには魚影が見えず、キャストして散らす以前の問題だった。
見える時は散らして釣れず、見えない時はただ釣れない。この日は運良く釣れたが、この川はとにかく高難度な川だ。

その翌週、僕はまた15分の川へ向かった。今回は一人だ。
初めて来た時と同じ朝が干潮で、散らさない攻略法が試される。
満ち上がって来る潮に乗ってチヌが見え始め、水深の丁度いい場所ではテイリングをやり始めた。
河口近くは深くハマるところも。
フライの落とし所が難しい。少し離れた場所へ投げたが一発で散ってしまった。
魚影は初めて来た時以上に多く、上流でもテイリングしていたが、一匹も釣ることはできなかった。
家から近いのはいいが、これだけ難しいと心が折れる。
攻略できたら大したもんだが、果たして僕にそれができるんだろうか?

僕はまだ昼前の人や車が多く通る町中の道を、釣り道具を抱えて車を停めた場所まで歩いて戻った。
この川の初物は40cmにちょっと届かないキビレさん。