2024 釣乃記
第壱話  それは1℃ から始まった
どんどん暗くなってきた。気温も下がっていそうだ。だがそれとは逆に体は温もってきた。そりゃそうだ、これだけ着込んで、渓歩きをすればそうなる。
道に上がれそうな場所があった。ここを逃すと当分上がれない。僕は上がる決心をした。
車に戻る途中、パトカーが停まって声をかけられた。僕の車を見て川で倒れてないか心配したらしい。お騒がせしてすみません。
車に着いた。気温計は1℃。
でも逆にかじかんだ指先は平気になっていた。歩いて温もり、血が行き届いたようだ。



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今年の渓流解禁は金曜日。僕は当然のように土曜日に釣行となるはずだが、予報では北部は雪マークが出ていた。前日になってもそれは消えなかったが、午後からは晴れマークになっていて、日曜日も似たような予報。それなら土曜日午後からならアリだなと思った。
毎年解禁で行っていた西の方の川ではなく、県北の川なら一時間ちょっとで着く。そして土曜日、午前中は市内も雪が降り、僕は様子見だと思いつつ二度寝してしまった。
昼前に起き外が晴れているのを確認して、僕は出発した。少し遅いか? 実際週末の昼間の渋滞を舐めていた。市内を抜けるのに30分以上かかり目的の川に着いた時は2時を回っていた。しかも途中でも雪が容赦なく降り(予報と違う)、着いた時の雪の降りようと気温の低さにやる気を削がれたのは間違いない。
これ以上ない厳しい条件の釣り。 あとは良くなるだけ?(^^;)
また吹雪いてきた〜。もうヤケクソ(^0^;)
Tさんと別れ、僕は本流筋を諦めて支流へ向かった。時刻は4時、あとワンチャンスはあるはず。
向かったのはすぐ近くにある、フライを始めた頃よく行っていた川で、長いこと足が遠のいていた。
ドライフライに向いた流れを選んで入渓。陽は山に隠れだいぶ光量が減ってきている。陰は気温もさらに低く指先がかじかんで痛い。
解禁当初は餌釣り師が多いことでも有名な川だ。 放流は多いと聞いているが、行けども行けども反応はない。淵ではニンフも試したが、マーカーが消し込むことはなかった。
(なんか、ダメかも)車から降りてすぐ、僕はそう思った。
冷たい風に乗って小雪が吹きつけてくる。来る途中でも雪は降ったり止んだりだった。
支度を済ませ川へ降りた。上流から吹いてくる風に逆らってのキャストできそうもなく、上流側からのダウンクロスでドライフライを流した。
はなっからライズを待とうという気はなかった。少しでも反応があればと
何度か流すが、フライはただ水面を漂うだけだった。
ものの数分で僕は場所を移動することにした。
西中国山地でフライを初めて30幾年、初めてガイドが凍った(>▽<;) 
帰宅するTさん。寒い中のライド、お疲れ様でした(^^;)
次の場所は本流に支流が流れ込む合流点。見た感じは雰囲気は良さそうだ。
しかし気温が上がらない。メバルの朝まづめと同等の着込み具合なので、ギリギリ寒さは感じない。唯一手先がかじかんできた。フィンガーレスのグローブで濡れたラインを扱うからやむを得ない。
キャストし流れるフライを目で追う。筋を変えてまたキャスト。何度か繰り返すが、フライになんの変化も現れなかった。
僕は何か気配を感じたのか、無意識に振り返るとヘルメットをかぶった男が立っていた。
寒々とし過ぎの川。魚はいなかったのか?
風、雪、低温、なぜ釣りに来た〜?(^^;)
Tさんのハンターカブ。やる気にさせるバイクです。  
二ヶ所目のポイントで現れたヘルメット男はTさんだった。
Tさんは去年の末から小型自動二輪免許を取り始め、今年になり無事取得。ハンターカブを購入と一気にライダーの世界へハマり込んでいた。
もちろん釣行に使うのだから荷箱やロッドケースも取り付け、カスタマイズにも余念がない。
聞けばTさんは僕がやったところを先にやっていたようで、僕はTさんのあとを辿っていた。
やはり釣果はなく、寒いので帰るという。バイクだからね。寒い中ご苦労様です。気をつけて。