2024 釣乃記
第漆話  思い出したゴギの谿
キャストしえぐれ手前に落ちたらグネッと魚体がうねった。
落ち着け。まだいける。えぐれの奥に入れようと投げると蜘蛛の巣に引っ掛かり宙吊りになった。
少し揺するとフライがポトリと落ち、ガバッと出た。
合わす! 切れたっ!!

だいぶ源流近くに来ただろう。十分満足するだけゴギを釣った。
「今が流程の半分くらいですね」とスマホを見ながらTさんが言った。
その言葉に僕はまだ冒険釣行は終わってないんだと思った。



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TさんからE谷の話のメッセージをもらったのはゴールデンウィークの中頃だった。中規模の渓谷の支流に当たるE谷は、そういう谷があると以前に僕が話をしたのだという。
E谷のことはわかるが、その話をTさんにしたことは覚えていなかった。どういう流れでその話になったかもわからないが、おそらくゴギが釣れる穴場的なか川の話の流れだろう。
それをこのタイミングでメッセージしてきたのは、Tさんが連休中に行ってみたいと考えたからだった。僕はすぐにその話に乗った。奥深いゴギの谿なら怖くてもう一人では行けない。さらに入ったことはなく、記憶からも消えかけていたような谿で、直近の情報もないのだから、一人でなんてとんでもない。
Tさんとは三日後に行く約束をした。久しぶりに冒険釣行のようなわくわくする気持ちが湧いてきた。これも忘れかけていた。
遡った分だけ帰りは戻るんだよな、当然(^^;)
ちゃんとゴギはいました。ほっと一安心。
「時間が経って水温が上がってきたから、活性が出てきたみたいですね」とTさんが言った。
なるほど、確かに朝の冷え込みは感じられなくなっていた。というか朝が冷えすぎだった。もっと言えばいらん心配をして早くに来すぎたということか。
僕とTさんは快釣を続けた。大きな滝のポイントではこの日最大のゴギをTさんが釣った。体高のあるいいゴギだった。
やや大きめの溜まり、流心からは出ないが、左にある大岩の下のえぐれが気になった。
ひんやりとした川筋の空気。水も冷たい。良さげなポイントにフライを流しても、それに出る魚はいなかった。
頃合いを見てTさんと先行を変わる。Tさんのロッドは7フィート7インチだったが、木々が覆い被さっている訳ではないので、むしろ6フィート3インチの僕よりも釣りがしやすそうに見えた。
少し経つとTさんが合図をよこし、また僕が先行する。どうにも反応がない。
(この川は外したかな〜?)と僕は思わないようにしていた事を思ってしまった。
僕が釣った中では一番の型。しかし実はもっと・・・。 
さらに上流を目指す。まだゴギは釣れている(^^;)
約束の日、Tさんを乗せE谷へ向った。
連休後半最初の日なので先に誰かに入られやしないかとか、行ったらボサボサで水の枯れ果てた釣りにならない川だったりとか、色々心配していた。
しかし車を停める場所まで来たら他に車は停まってないし、谿の入り口まで行くと予想外に開けていたので、心配は杞憂に終わった。
そうなると、あとはゴギがいるかどうかだ。
着いた時8時過ぎで気温は8度。さすがに奥深い谿だ。
本日最大魚、Tさんがヒット。  
初めて入る谿。川の様子も魚影も未知数。
ゴギさんががっぷり飲み込むアントかな(^O^)
しばらく釣り上がり、ようやく僕のアントにゴギがきた。全くいないなんてことはなくてよかった。
しかしそのあとまた釣れない時間が続く。
Tさんが声を出した。見ると川に横たわっている倒木の枝の葉をもいでいる。それはコシアブラの木だった。
僕も採った。思わぬ収穫だった。

コシアブラを採ったあと、その上流からゴギが釣れ始めた。
僕とTさん、釣ったら交代したがポイントとおぼしき場所から必ず出る好反応になった。