其ノ四百二十七  初釣り  海フライの10年
「面白そうな釣りじゃね」
そう言って、最初に防波堤に居た釣り師は帰って行った。ちょうど満潮、彼は上げ潮狙いでやっていたのか。
僕の釣り方が一風変わったものだというのは、同じ釣りをする者としては当然わかるのだろう。
上げ七分には間に合わず、満潮のスタートとなった。
一投目、予感があった。リトリーブを五回くらいした時に手応えが伝わってきた。
年始に相応しい穏やかな天気。
初釣り恒例、七つの橋の島の四番目の島にある神社で初詣で。そのまま島中央の港へ直行。入れ違いで釣り師が帰り僕ひとりとなった。
一投目で首尾よくメバルを釣ったので、まずは初釣りボウズはなくなった。なんだか呆気ないな。
風も弱く陽射しが暖かく、人に優しい気象条件は釣れないの法則は完全に打ち破った。まだ潮は下がり始めていない。今のうちに釣っておこう。
初釣り第一投でのメバル様。幸先よし!
少し経って親子連れがやってきた。あいさつを交わすと親子は防波堤先端を陣取った。お父さんの方がやってきて、調子はどうかと尋ねてきた。僕がメバルを釣ったと言うと、子供のほうが早速アジを釣り上げていた。早い。
お父さんが子供のところに駆け寄り、僕はまたキャスティングを再開した。
そのあとも数匹のメバルを釣って、無難に初釣りの釣果を上げた。
なんか、物足りないな。
初釣り終了後の新年一回目の釣行ランチは年越し後そば。
去年の初釣りはなぜかこの港は絶不調で、昼から始めて夕方まで一匹も釣れず、最後の最後に三番目の島で過去最大メバルを釣るという離れ業をやってのけた。筋書きのないドラマ、じゃないけども、スリリングで面白い初釣りだった。そういうのは数年前にもあり、また良く釣れてもラインをひかっけて切れてしまった初釣りもあった。散々ランガンしてアナハゼ一匹というのもあった。
こうやって考えてみると、今は実に安定してメバルが釣れるようになった。ボウズになるかも知れないというハラハラドキドキがなくなって、そういうドラマティックな釣行は安定な釣果と引き換えに体験できなくなってしまった。

大型=深い層 と単純ではないだろうが、思いきってカウントダウンを長めにしてからリトリーブしてみた。
最近よくあるのだが、魚がフライをくわえる前の気配のようなものが感じる(予感?)。
(来る来る)と思いラインを手繰るとググーっとロッドが曲がった。メバルのトルクフルな引きとは違う、アジだ。
現金なもので、さっきまでの物足りなさは、アジを釣った事で幾分紛れた。
防波堤先端の親子と同様に、アジの群れが回ってきたようだ。メバルは釣れなくなり、アジばかりが釣れる。
またしてもアジ様降臨。群れに当たったのか?
この港の初釣りも何年にもなるがこんなにアジが釣れるのは初めてのことだった。
海フライも丸10年、小型メバル相手のライトウェイトの釣りも卒業する時期に来たのかも知れない。
次に僕にどんな釣りが出来るのか、まだわからない。
でもこういう事を考えるのも新しい年の初釣りには相応しい気がする。
少し重たい引きが伝わってきた。この手応え、良型のメバルが掛かったようだ。
ボウズよりは釣れた方がいいけど、欲は次々でるよな〜(^^;)