其ノ四百二十  パエリアと強風の島
まさか二週続けて、なんてことはないだろう。僕はそう高をくくっていた。
前回の最大風速15mには参った。あれは釣りにならない。やってて楽しくなかったし。
今回、市内から近い島に釣行先を変えた。七つの橋の島はあれでも強風かもしれないと先読みしたつもりだった。

広島県の中央に、その位置から「へそ」を名前に冠した、おへそカフェ というお店がある。
おへそニャンコ先生! そんなにスリスリされるともう・・・(>▽<)
スペインから広島の山里へ移住してきたオーナー兼シェフの絶品パエリア。ビザやパンもおいしいと評判だが、その日のお店のオススメメニューには従う主義だ。
大満足の昼食を終え、おへそニャンコ先生にもスリスリあいさつを済ませて、土曜日は勢いづいた。

そして翌日曜日、風の弱い島を選んで行ったつもりだったのに、その島は前回同様の強風が吹き荒れていた。
瀬戸内の魚介と地元野菜のパエリア。絶品っ!

満潮まであと1時間ちょっと。魚影はかなり見えるが、キャストしても思うところに飛ばないし、飛んでもすぐに風でラインがあおられる。
「フライですか!?」 突然話しかけられた。強風で釣りを諦めて帰る釣り師が僕に話しかけてきた。
「はい、風がつらいです」と返すと、うんうんと頷いてその釣り師は帰って行った。
そのすぐあと、この日の一匹目が掛かった。
この日も強風が吹き荒れる。でも黙って引き下がるのか?
一匹目を釣った時点で僕のいる防波堤は家族連れが二組。
僕に近い方の組はお父さんと息子さん。最初は難しそうにやっていたが(おそらく息子さんは釣りは初めて)、途中から息子さんが俄然釣れ始めた。ギザミとメバルを交互に入れ食い状態になった。
こりゃあいかん、とばかりに僕も七つの橋の島で培ったフライをキャスト&リトリーブ。最初は投げる度に反応があったがかなり小さそうだ。
FB友達の名付けた瀬戸内ブルーバック。カッコイイ(*^^*)
寒風で雲がちぎれ、島は寒々としていた。 スズメダイをちゃんと口にフックかけて釣ったの初めて(^^;)
風が強くてラインが引きずられて、結果フライがあまり沈まない。もう少し風が弱ければちっとはましな釣りをする自信はあるのだが、強すぎる時はまともなリトリーブも諦めざるを得ない。だいたいこの日は前回の強風のリベンジで来たのに、また強風。初冬の海ってこんな感じだったかなあ。
「風が強いなあ。あちこち回ってどこもこんなよ」と近づいてきた関西弁混じりの若い釣り人がそう言った。「心が折れますね」と僕が言うと、「ぎりぎりでぶらさがっとりますわ」と彼は言って離れてロッドを振り始めた。

この日の前日、おへそカフェのあとは県北にある丘陵公園にウィンターイルミネーションを見に行った。西日本最大というだけあってすごくきれいで見ごたえがあった。それから帰ったので、一日で350Km近く走った。ヤマメを釣りに行くのでもここまでは走らない。翌日の今日は近い島といっても往復で150Kmはある。二日で500Kmはけっこうきついのにまた最大風速15mをくらって、なかなかハードな週末だ。
ソルトウォーターのフライを始めて数年後の頃、この島のこの防波堤に停まっていた大型船のゲート下の群れたメバルをテンポよく釣った事がある。
この日はその時と同じように大型船のゲートが降りていた。群れは見えるが小さいヤツばかりだった。

家族連れが二組とも帰って行った。ちょうど満潮になった頃合いだ。
6月以来の20cm越えメバル様。お付き合いありがとうございます(*^^*)
僕が車で片づけていたらMr.関西弁が車を寄せて窓から顔を出して「どうでしたかー?」と、言った。「大型船のゲートの下でいいのが出たよ」と僕が言うと彼はうんうんと頷き、笑顔を残して車を発進させた。
最後の良型メバルでなんとか救われた。強風はまだ収まらず、海は干潮になった。
Mr.関西弁を見送ったらお腹が鳴った。昼飯を食べてない。
またおへそカフェのパエリアが食べたいな、と僕は思った。
強風の港を後に。パエリアとニャンコ先生スリスリがこの日の釣りの力になった。