其ノ四百五十五  大潮が連れてきたもの
低温は着込めばなんとかなると思った。問題は風だ。
フィンガーレスグローブから出た指が濡れても、風がなければ大丈夫だが、風が吹くと途端にかじかむ。
着込んでいても風に吹かれ続ければ、じわじわと冷えが堪えてくる。

七つの橋の島、四番目の島の中央港の防波堤は、突端にひとりだけ。あとは釣り人の姿は見えなかった。
時折出る陽射しは一瞬。
寒い。そして風も強い。
前回のぽかぽか陽気の釣りから、一週間でこんなに変わるとは。
予報でも言っていたことだから覚悟はしていた。朝の五度の気温もすぐに車に乗り込んで暖房をかけたからなんとかしのげた。
しかし現地に着いてからもこんなに寒いとは思わなかった。この分では昼も気温はさして上がらないだろう。
そして海は上げ潮の潮流でかなり荒れていた。
時間をおいてからきた、この日一番のメバル様。
上げ潮なのにかなりの潮流の強さだった。キャストして流してリトリーブ。しかしなんだか釣りが成立していないような感じだ。あまりにも流れが激しすぎた。しっかり上げ七分に照準を合わせて島に来たのだが、僕はちょっとやる気を削がれてしまったような気になった。
防波堤内湾側は風で波立つ以外は穏やかなので、僕は係留柱に座ってキャストしゆっくりリトリーブしながら少し時間を置く事にした。朝が早かったが止まない強風と低温のせいか、眠たくはならなかった。
釣行もぐもぐタイム、先週に続きどんきつね様(^^) 荒れる島に強風をもたらす厚い雲。
若い二人連れの釣り師が来るのが見えたので、また外湾側をやってみる事にした。
すると状況は一変していた。例によって潮流の向きは逆になり、流れの勢いはやや弱まっていた。
時間をおいてからの一投目、ドスンときた。タイミングをずらしたのが功を奏した。
次の一投、着水後に引くともう掛かっている。これまたかなり重い。
(まさに地合いの真っ只中だ)と思った。
「着食い」のメバル様。なにがそうさせるのか?
メバルの写真を撮っていると若い釣り人がじろじろ見ている。ほっといてください。
三投で三匹目を狙って次をキャストしようとしたらティペットがもつれていた。風が強いし仕方ない。
ほどこうとするも、手がかじかんで思うようにいかない。結局結び直し投げようとすると、今度はフライラインが絡まっている。
ほどいてようやくキャスト。なんだか海の様子がまた変わっていた。地合い終了か?
島は今が紅葉。ただし気象は冬で荒れ気味。
先端の釣り師も若い釣り人達も帰り、僕ひとりになった。明らかに食いは悪くなった。
風が吹き続けて疲れたので僕も昼飯を取るため移動した。
同じ島内の別の港の公園、ここは風が吹かないはずが強風だった。湯をわかしカップ二品、温かいものがおいしい。
昼食後、その港でやってみた。すでに下げ潮、一投でここでは初の良型が釣れた。
大潮は寒気や強風だけでなくいろいろ連れてきてくれたようだ。
最後の港のイケメンメバル様。惚れました(*^^*)