其ノ四百八十五  初釣り クリティカルな予感
まだ潮位は低かった。満潮まであと三時間くらいはある。気が急くから早めに来てしまった。まあ、やってみる。
潮流はゆるい。島の人たちが言うところの「やわい潮」という状況だろう。
どちらが潮下か見分けにくいが、防波堤先端方向へ平行にキャストした。すぐにリトリーブ、またはカウントして。それを繰り返した。
全くアタリはなかった。僕は大きく溜息をついた。
恒例の初詣で。神社のある港は平穏そのもの。
今年の初釣りは元旦に行く事にした。年が明けてから休みが終わるまでの間で元旦が一番潮がいいからだ。小潮から始まり徐々に潮の条件は不利になっていく。それと、元旦なら釣り人は少ないだろうと読んだのもある。二日以降はけっこう釣り人は多くなってくるのが例年のパターンだ。読み通り、七つの橋の島の四番目の港、件の引っ掛け釣りとハシゴの場所は誰もいなかった。ただし、ここに来る途中の港では数人の釣り人は見かけた。
暖かな元日。暖冬ということだが、全く正月らしくない。風はややあるが釣りをするのには気にならない程度だ。小潮の満潮の2時間くらい前だし、やってみた感触ではすぐには釣れそうな雰囲気でもない。僕は一旦この場所を離れる事にした。
同じ四番目の島の別の港の集落にある神社。もう何年連続になるか、ここに毎年恒例の初詣でに来ている。
元旦だが参拝の人はまばらで僕はゆっくりとお参りをすることができた。お賽銭も奮発したしお御籤もひいた。あれこれ思うところもある。
車に戻り僕はまた最初の港を目指した。場所を取られていたら仕方ない。
港に戻ると釣り人は二人来ていたが、僕のやりたい場所は空いていた。
初もぐもぐタイムはどん兵衛年明けうどんと麻婆豆腐丼。
潮は上げ七分、小潮ではあるが好みのタイミングで好きな場所でロッドが振れる。
僕はこれは参拝の御利益かもしれないと感謝しつつキャストした。
やはり潮流は弱い。魚影は見えるが小さいのばかりだ。しばらく反応はなかったが、一度ククンっときた。
そいつは掛からなかったが、次のキャストから続けてチビメバルが釣れた。小さいけれど、これからに期待しよう。
今回で六回連続の快晴釣行になりました(^^)
昨年末の釣りの時にも思ったが、僕は今時点では日中にフライでメバルを釣るための場所をそう多くは持っていない。だから数少ない好釣り場をその日に確保することが釣果にかなり影響する。新規開拓は必要だが、どうしても無難な実績ポイントへ行ってしまいがちだ。
その無難なポイントも徐々に釣れなくなってきたのが去年後半。引っ掛け釣りとハシゴ。暖冬も関係があるかも知れない。逆にこの七つの橋の島ではなく別の良く行く島では直近の二回はまずまずの釣果だった。場所によってそれぞれだろうか。
急に甲高い声がし始めた。中学生くらいの女子たちが五,六人防波堤にやってきた。元旦だから島外から両親と帰省している子たちかもしれない。島のことだからやることがなくてヒマなんだろう。もちろん釣りをする訳ではなく、ただやってきてあれこれおしゃべりをしているだけだ。一気に防波堤が賑やかになった。
女子たちの声をBGMに(男子だったら鬱陶しく感じるんだろうなあ)ロッドを振る。
釣れるのは変わらずチビばかりだ。すでに満潮を過ぎた。下げ潮がいい港へ移動すべきか、迷いが出てきた。
気付くと女子達が静かになった。みんな防波堤に座り込んでいたが、帰る気になったか立ち上がり歩き始めていた。
それに習って僕も場所を変える事にした。七番目の島まで一気に行き、誰もいない防波堤でやってみた。
ぼちぼちのメバル様。釣れていただきありがとうございます(_人_)
三番目の島、夕まづめ定番の港。みるみる辺りは暗くなってきた。
七番目の島でもチビばかりで四番目に戻り昼(夕)飯を食べてここへきた。干潮も近いので微妙だが、まづめなら釣れるだろう。確か去年の初釣りもこんな感じだった。
夜狙いの釣り人がぽつりぽつりやってきた。すっかり暗くなっても結局三番目の島ではアタリひとつなかった。
きびしい今年の釣りの始まりの予感がした。
これでも十八時過ぎなんですが、島ではすっかり夜の気分(^^;)