其ノ四百八十八  寒い港の不協和音
「そりゃあだましか?」と地元のおじさんが声をかけてきた。おそらく擬似餌か? と聞いてきたのだろう。
「そうです。フライというやつです」と答えると、
「先に行った二人はコブダイを狙うらしいで」と言い、戻っていった。
防波堤先端に二人、常連のようだ。僕は風が強まらないうちにと、キャストを開始した。この日は満潮の十一時の手前から風が吹き始める予報だった。
うすら寒い日。この防波堤の外海側でアレが・・・。
魚影はいくらも見えないが、潮は変わりつつあるので、いつ活性があがってもおかしくない。
この日は不調の七つの橋の島に代わって、近場の島に来た。昨年末、わりと調子の良かった港だ。
新規釣り場開拓も考えたが、一月ももうすぐ終わるし、二月産卵時期は状況が微妙なので、この港で七つの橋の島のストレスを払拭するメバルを釣りたいと思った。
釣り終了後のもぐもぐタイム。岩場だと落ち着かん(^^;)
連続七回、快晴の釣行となっていたが、八回目で途切れた。曇りで気温も低い。というか、この秋冬で初めて釣りで寒いと感じた気がする。それだけ暖かな釣りが続いていた。寒いと体が縮こまり、動きがぎこちない。キャスティングもおぼつかない感じだ。と、バックキャストで横風が吹き、フライが僕のジャケットに刺さった。取れない。仕方なくバーブをフォーセップで潰して取った。僕は少し予感がしたが、バーブレスになったフライをつけたままキャストした。
ゴゴンっ! 来た。良い型だ。っと、プッとバレた。あー、やっぱり。#20でバーブレスは・・・取り換えるべきだった。
問題の漁船。確か過去にも遭遇したことが。 マナー重視の地元漁師さん達は船でミーティング。
エンジン音が聞こえた。見ると漁船が防波堤突端に接近している。あ、こいつは前に見た事がある。防波堤の際を網を引く漁船だ。
思った通りその漁船は防波堤沿いをこちらに進んできた。そして僕の目の前のポイントもバッサリと。
「もっと沖で引けやー!」っと急に声がした。内海側の停泊中の漁船でメンテをしていた地元漁師さんだった。
漁船は防波堤から離れた。
中の小くらいのメバル様はけっこう釣れてくれたんです。
「よその船じゃ。防波堤の際で網を引くのは違法なんじゃ」と漁師さんは言った。別の地元漁師さんは、行儀がわるいやり方だと言った。この港の人はやらないと言う。なるほど、行儀か。
そのあとしばらくして、その漁船はまた戻ってきて網を引いていた。

翌日の日曜日、予報ははずれて穏やかな日だった。日曜日に行けばよかったかな。例の漁船もお休みだったかも。
翌日のお昼。翌日の方が天気はよかったな(^^;)