増水した渓とくれば水が入れ替わり渓魚も元気を取り戻し、ストレスのないテンポのいい釣りができると思っていた。
そうである時もあればそうでない時もある。

目的の支流には釣友のW氏の車が停まっていた。まあそうだろう。僕は二度寝してしまって、渓の到着時刻は10時前だった。
良さそうな所には誰かが入っていることは覚悟の上だ。
僕は少し距離を取って下流側に入渓した。
三週間ぶりの渓は潤沢な水量で高活性の釣りは約束されたようなものだと確信して入渓した。
いきなり浅いチャラ瀬で10cmゴギが釣れた。こんなところにゴギが。しかもこんなに小さい。
水位が高いといくらかポイントがなくなってしまう。
ていねいにポイントを探して投げていくがいまひとつ反応がない。
沈めた方がいいかもしれないと、迷いが頭をかすめる。いつものことだがその日の釣りの流れを掴むまでが問題だ。
遅い昼食はマルちゃん中華風焼きそば、オイスター醤油味、デリシャスハム入り( ´ー`)y-~~
二番目の沢の方が水位は落ち着いていた。
ほんじゃあいっちょう、いってみよーかー(^0^)
次の谷はすぐ近くだった。やはり増水はしているが最初の川ほどではない。
ここに来る手前、下流の方に釣り師の車が停まっていて、釣り師はそのさらに下流で道の上から延べ竿を出していた。
時間もいくらか経ったからか、だいぶ暑くなってきた。少し夏が遠ざかった気がしていたが、そんな訳はなかった。

フライを下から押し上げるようにゴギが出た。食っていない。
スレていやがる。ゴギのくせに。
実際のところ最初の沢はW氏が先行していなかったとしてもどうだっただろうか?
あの水位はゴギの行動を抑えてしまうところまでいっていたのかどうか。そもそもゴギが元気に活動するのに水位が関係するかどうか。関係はするだろうけど水位のみで決まる訳ではないのかもしれない。しかしカラカラの渇水よりは増水の方が釣りをする側としてはやる気になるから、結局天気予報で雨を待つことになる。

またフライの横に魚体が浮上した。もちろん食ってない。しかも一度浮上したらあとは全く出てこない。いったいなにがここのゴギをこんなにしてしまったのか。ふとヤマメは今ごろどうしているだろうかと思った。ひょっとして釣りにくさ、気難しさではヤマメとゴギは逆転してしまっているのではないか。
これまた浅いチャラ瀬から飛び出したゴギ。こいつが釣れなかったらと思うと・・・。
この季節は同じ感じの色合いの花が目立つ。虫を誘いやすいのか? この色のインジケーターも見やすい。
「!」 真新しい足跡があった。
今までここは歩くだろうという場所に足跡はなく、先行者の可能性はないものと思っていた。
そもそも釣り師らしき車は・・・あった。W氏の車。そうか。
彼は車を置いて道路を下流側に歩いて移動し谷へ降り、そのあと僕はW氏と同じ場所から入渓したということか。
さらにW氏はサウスポーなので川での立ち位置がいくらか違い、足跡に気付くのが遅れた。
そうとわかれば移動しよう。この辺りにはほかにも谷がある。
毛ばりも夏の装いで。
遅い昼食を取り、今日はもう帰ろうかと思った。
しかしなんだか物足りない。もっとゴギを釣りたいというよりも、もっとロッドを振りたかった。

普通なら見過ごすような浅い流れでそのゴギはいきなり出た。
フッキングはしたがロッドを保持するのに上の木の枝が邪魔をした。僕はあわててロッドを寝かせそのままゴギを岸にずり上げた。
ふう、と息をついた。このサイズのゴギがこんなに遠いとは。
ほかの仲間はどこに行ったんだ?
そう聞くとゴギは跳ねて僕に水をかけてきた。
貸し切り渓流。ゴギは自分で負担o(`ω´*)o
反応がないまま遡行を続けた。
増水も限度を超えるとゴギの活動に影響するのだろうかとか、多くの入渓者で数が減ったりスレたりしているのかとか、考えた。
一番あって欲しくないのはこの日この川に先行者が居ることだが、今のところその形跡はない。

二度寝のお陰でスタートは遅かったが時間の経過とともに湿度はいくらか下がっていたので、曇り空であまり上がらない気温とともにずいぶんと快適な遡行ではあった。
増水時、水中に没する植物はそれを前提に生えているのか?
果たしてゴギはどこへ帰っていくのだろうか?