2015 釣乃記
第七話  彼方のライズへ
少しづつ山にもいろんな色が見えてきだした。
見当をつけていた場所には車が停まっていた。まあ、そういつも良いポイントを独占出来るとは限らない。僕は別の場所を目指して支流沿いの道をさかのぼった。
この辺りでどうか? というところで車を停め準備開始。

すでに虫が飛んでいる。一週間前とはずいぶんと状況が違っていた。水温はやや冷たい。水位は安定している。遡行する釣り人にもエサをとるヤマメにもちょうどいい感じだ。
里はようやく春本番。川もこれからが本番だ。
ライズは複数の魚によるものだった。相手に不足はない。
その中でも一番大きそうなライズへキャスト。素通り。もう一度、素通り。
フライを変えてみる。辺りにはマエグロしか見えないが、ライズの感じからして水面になにかがいるはずだ。
サイズを落としてウィング以外は水中に入るパターンで。キャストしたら風で押し戻され少し手前に落ちた。と、一発で出た! 
う〜ん、小さい。
今週も目に付くのはやはりマエグロ。ほかのカゲロウも飛んでてくれ。
ウグイスがしきりに鳴いている。車を停めた辺りではツバメが飛び交っているのが見えた。
山里もようやく春本番か。さすがにもう寒の戻りはないだろう。
迷わずドライフライを結び、キャストした。これは今日は楽勝なのではないか? と思った。
良さげな流れをいくらか流すが出てこない。まあまあ、そうすぐにはね。
僕は気にせず川通しに上流へと向かった。少し行くとライズが見えた。よっしゃ、もらった。
ライズの期待出来る小プール。途中あれだけライズしていたのだから、ここも間違いないだろう。
ここは奥に長いプールなので、双眼鏡を持ってきた。
のぞいて見るがしばらくの間、水面は静まり返ったままだった。
と、いきなり魚体が水面から飛び出た。小さい。
捕食と言うよりただ飛び跳ねているだけのように見える。
それが何回か続く。と、流心からそれた場所で少し大きめの魚体が跳ねた。双眼鏡で凝視する。
水面を割ってヌッと出るヤマメは迫力があった。
川筋は日が陰ってきた。ライズも見つけにくい
カエル先生もお目覚めのようです。
平水は川歩きが楽だ〜。ポイントも消えていないし。
その後粘るが結局釣れず。ちび一匹のみ。あれだけライズしていたのに。
更に上流へと移動する。虫の飛翔はまばらになってきた。ハッチのピークを過ぎてしまったか。
と、なんでもないチャラ瀬でライズした。なにかは捕食しているようだ。キャストするとこれまた小さいヤマメがヒット。
この辺り、全般に魚影は濃いがとにかく小さい。いや、大きいのもさっきのライズの時見たから、僕が不甲斐なかっただけか。
ライズ攻略にこれを。
ポイントを確認し、キャスト。
出ない。別の場所でまたライズ。
うむむ、これは一番落ち着かない状況だ。
数投してフライを変えた。CDCダン、半沈み、クリップルダン。あれこれ試すが僕のフライには見向きもせずライズは続く。
僕はもう一度双眼鏡を取りだし、ライズした辺りの水面を見た。
虫はいない・・、いた。黒っぽい虫が水面を行ったり来たり、スケーティングしている。
これは、カディスだ!
とりあえず、釣れたのでよしとするか(^O^;)
CX-3くんおまたせ。ほんじゃあ帰りますか。
エルクヘアカディスを結びキャスト。一発で出た! 小さい!!
そのヒットを境にライズが止まった。気付くのが遅かったか。

道路に上がるまでの残りの区間、トロッとした流れにフライを落とすとボコッと出た。
グイグイ引く力に僕はすぐにはなんの事だかわからなかった。
あれほどライズに手こずったのに呆気なくこの日一番のヤマメが釣れた。
できればライズしているこれくらいのヤツが釣りたい。
次回への宿題ができた。