其ノ三百四十二  島に残してきたもの
今週もニャンコ先生のもとへ。覚えてくれてますか?σ(^_^;)
午後からの潮流までには十分時間がある。満潮の港で僕はおにぎりを食べてゆっくりしていた。
干潮がちょうど日没頃になる。それまでは釣りができるという計算だがどうだろう?
場合によっては夕まずめをやってみるのも手だが、干潮だからどうか?

時間潰しで港をぶらぶら歩いた。
いつものニャンコ先生もいた。島の港ニャンコ先生は島の生活にすっかり馴染んでいる。
リップをつけたマシュマロミノー。効果は・・・微妙。
そろそろ頃合いのはず。僕は新たに巻いてきたミノーパターンを投じた。マシュマロファイバーを使ったやつだ。
しばらくやってみたが、メバルの反応はなく、ミノーは水圧でぺしゃんこに。なかなか手ごわい。
反応がないのは別として、魚影も一切見えない。このあたりが海が毎回状況が大きく違うところだ。
同じ場所、同じ潮、同じ状況のようでも釣れる時と釣れない時がある。それがあらかじめわかれば苦労はしないのだが。
「夜狙いなので、ここに荷物置かせてもらっていいですか?」と、話しかけられた。新たな釣り人だった。
「夜もお続けになるのなら離れた場所に入るので」とその人は言い、僕はいいですよと言った。僕の立っている場所がこの人にとってはかなりの好ポイントのようだ。
僕は暗くなってまではやる気はなかった。それまでにメバルが釣れればと思っていた。しかし考えは甘かった。ここでもコツリともしない。このままここで粘るか? かなり潮位は下がり、干潮が近づいていた。と言う事は夕暮れも近い時刻になったと言うことだ。
夕まずめが干潮だとフライでは難しいが、ひとつそうではなくなる心当たりがあった。僕はこの場所を先ほどの人に譲り、ニャンコ先生の島へ戻る事にした。
だんだんと辺りが薄暗くなってきて。
場所を移動した。橋をひとつ渡りとなりの島へ。
何度かいい釣りをしたことのある防波堤へ向かった。すでに数人の釣り人がいたが、すぐに二人が帰り支度を始めた。
僕は空いた所に入ってさっそくキャストした。
しばらく続けていると「釣れますか?」と最初からいた人が声をかけてきた。
「いやあ釣れませんね」と言うとその人は僕のフライを不思議そうに覗き込んだ。
ニャンコ先生の島の港には浮き桟橋がある。ここなら潮位は関係ない。
浮き桟橋の周囲を歩くと魚影が見える。桟橋の周りを回遊しているようだ。
僕は桟橋のふちに沿ってキャスト、リトリーブした。

日はすっかり暮れ、雨が落ち出した。遠くでニャンコ先生の鳴き声が聞こえた気がした。
僕はこのまま海のフライを終え、河川解禁に向かう、と言う気にはなれそうもなかった。
島の夜は漆黒。雨も降り出した。