2019 釣乃記
第弐拾七話  秋のような、夏のような
八月最終日、秋のような夏のような。
気温15度! 長袖のクルーを一枚では寒いくらいだった。
日中は日差しも出てくるはずだから、このまま川へ降りた。
川はひょっとしたら釣りが出来ないくらいかと思っていたが、いつぞやの増水ほどではなく、十分釣りになる水位だった。
あらためて、この日釣りが出来るんだ、と僕は思った。

夏以降、出番の増えたスパイダーパターンをキャスト。すぐに小さいアマゴが釣れた。
ふむ、ゴギではないのか。
そもそもこの日の釣りはほとんどダメだろうと諦めかけていた。週の頭の予報では週の半ばに大雨が降り、週末まで傘マークは続いていた。前回の釣りが今シーズン最後になったとしても、まあそれはそれでいいかな、と自分で納得できるように気持ちを落ち着かせようとした。
週半ばの大雨は他の地域に被害をもたらし、今年も起こってしまったかと胸が痛む。そういう意味では後ろめたいが、週末の天気は弱い雨の予報に変わり、ついには漁期最終日の土曜日だけ晴れマークが出た。
降らないのならどんなに増水していようがなんとか釣ってみせる。それが期待できる川もリストアップしている。そのひとつがこの川だった。結果は意外にも大人しめの増水で済んだ。
コロッケニャンコ先生! 今年最後です。ちょっと出てきてください(^o^;)
いったん上がったのにすぐまた川が気になる(^^;)
どっち付かずの中間的な季節感? になってきた。
この川は今年三度目。増水の時と平水時にも来た。どちらもゴギを釣る事ができた。市内からも1時間ほどで来れる割に深い谷が、非日常感を味合わせてくれる貴重な谷だ。

この谷に来る途中、僕の前を4WD車が走っていた。釣り師に間違いなかろうと思っていたがどうにもこの谷へ向かっているように思えてならなかった。
インターチェンジを降りて道の駅の猫にあいさつしている時だって、それらしき車が何台も通過していった。
浮いてきたたスパイダーにチュッと小さな反応。合わした。掛かった。・・・掛かった?
ぐねぐね魚体がうねる。あ? でかいの? 僕は大いに焦った。ネットを差し出すがすくえない。さらに焦った。

川よりかなり上を通る川沿いの道を、釣り師らしき車が頻繁に行ったり来たりしている。
今年最後の渓流を良い釣りで納めようと、きっとみんな必死なんだろう。
もぐもぐタイムラスト。辛い。唯一汗かいた(>▽<)
すやすやタイムはすっかり本気寝が恒例に。
この時期までしっかり残ってくれたアマゴ様に感謝です(^人^)
だいぶ時間は経った。すっかり秋めいた渓を予想していた。日差しが強まってきてまた暑くなるかと思えば、少し違う。
夏と秋の中間。禁漁直前の渓はそんな空気感が漂っている。
それは不思議な違和感にも似た感覚だった。

スパイダーで釣った一匹で余裕が出た僕は、場所変えした川で良型を立て続けにバラした。
暑さと一緒に少し気も緩んだかも。僕は気を取り直し、次のポイントへキャストした。
結局目当ての谷に先行して入った釣り師の車は一台だけだった。僕のやりたい場所と違った所に停まっていたので、僕は心置きなく目当ての場所へ入る事が出来た。

過去二回、この川で良型ゴギを釣ったポイントでは、今回はなにも出てこなかった。
少し水深のあるポイント、浮力の乏しいスパイダーをキャストするがすぐに沈んでしまう。それでもキャストすると、手前にポカッと浮いてきた。