2020 釣乃記
第四話  行き過ぎた春の先に
短い距離をたっぷり時間をかけて釣り上がっての、帰り道。
左からキャストされたフライが水面に落ちた。川底からユラッと魚影が現れフライをくわえた瞬間、フッキング。水中でもがくヤマメの魚体が白く見えた。

「良いヤマメですね!」と僕が声を掛けると、W氏は振り返って笑った。
この日の釣りの帰り際にW氏の車を見つけ、様子を見に川へ降りてみたら、どんぴしゃりでヤマメを釣るところに遭遇した。人がヤマメを釣るのを見るのもなかなか楽しい。
この日の釣りの数日前、maekawacraftにおじゃました。「今年は早いで」とM川氏。僕はやはりそうだろうなあと思ったが、一週間前にはM川氏たちは北部の降雪に遭遇していた。それを考えるとまたまた冬に逆戻りかと思えなくもないが、今週末の予想最高気温は逆にひと月先を行っている感じだ。
早い時期から楽しめそうなのは良いが、中盤や後半がどうなるかが逆に不安になる、と僕。五月以降は雨の降り具合と見ながらの釣行予定の立て方になりそうだ。また、ひどい災害や台風がこなければいいが。

毎年やるがここ数年釣る事ができていない定番のポイントが見えてきた。入渓から時間が経ち、虫もかなり飛び始めている。
大型のカゲロウが出るだけで、やる気も出てきます。
TMC531で巻いたCDCパターン。ストレートシャンクが今年調子がいい。
今年初のこの流れ、水多いわあ。
ここは去年の会わせ切れポイント。前回と先程の、会わせ切れに注意するがあまりの弾かれが気になるが、もうやるだけだ。
実はここは前回もやっている。水中ぐりぐりで一回バラして次キャッチ。バラしはカーブシャンクフック、キャッチはストレートシャンクのフライだった。
ここはストレートでいく。CDCとハイビズのウィング材を乗せたパターンだ。
付け替えたフライを下流へ垂らしていたらカワムツに食いつかれてしまった。
ライズを待てずにキャストを始めた。それがどうだったか?
あと数センチ奥へ。サイドキャストで張り出した枝の下にうまくフライが入った時、ヌッと白い魚体が水面に弧を描いた。
合わすとクンっという手応えを残してフライが外れた。
(またやった!)先週の弾かれた時に似ている。合わせ切れを意識するがゆえに、今度はこの現象が続き始めたのか。
気を取り直しての少し先の流れで、あっさり解禁初日を超えるヤマメが釣れてしまった。
三月のワイルド。季節が早まってる影響か?(^^;)
maekawacraftのネット、新調しまして(^^)
ヌルをふき取ってキャスト。すぐにきた。小さい。下流側へそっと放してまたキャスト。
またきた。今度はややサイズがいい。すぐにキャッチ。どうやらこのフライは反応もホールドも良好のようだ。
数歩上流側へ。核心部へキャストした。手前近くまで反応がなかったが、すぐ目の前まで来てワサっと魚体がかぶさった。
合わせた。掛かった。重い!
バランスを崩し、背中のネットを握り損ない、早過ぎる季節の進行で前倒しでやってきたヤマメを、僕は掬った。
世間は三連休、その真ん中の土曜日、最高気温は20度の予報でライズの期待が高まる。早く着いたらゆっくりやればいいと考え、やりたい場所を取ることを優先して朝早く出た。
首尾よくいつもの場所に車はおらず、僕は目当ての流れに立った。朝の冷え込みは予想通りだったが、増水は僕の予想以上だった。
何箇所かの有望ポイントは沈黙したままだった。水は多いし水温も低い。遡行もきついのでゆっくり上流へ向かった。
ここまでかなりゆっくり釣り上がった。たいした距離ではないのに、十一時を知らせる集落の放送の音楽が聞こえた。すでに三時間近く経った事になる。
一番期待しているポイントに一番良い時間に到着するように調整した甲斐があった。

そのポイントはやはり増水の影響で水位は高めだが、十分釣りになりそうだった。
カゲロウは見えないがカディスはかなり飛んでいる。ポイントの奥のほうでスッと銀色が光った。ライズしている。
もぐもぐタイムは15時過ぎ。腹減った〜。
あなたはニホンミツバチさんですか?