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2021 釣乃記
第壱話 渓流マルチタスク
一度履いた右のウェーディングシューズの紐をほどき、脱いでウェーダーから足を抜いた。
靴下を脱ぎ、再びウェーダーとシューズを履く。
だいぶマシになった。 狙いの場所に車はなく、途中も2台見かけただけだった。解禁から五日経ち、最初の週末。釣り人は平日に分散したのだろうか。 川へ降りると、このエリアはほぼ一年振りなのだが、いよいよ始まるという感慨は感じなかった。というか、その余裕がなかった。
この週末を迎える数日前、尿酸値が上がると(実は増減の差が大きい時になるというのが正解)、出てくる例の風が吹いても痛い症状が出てしまった。病院で痛み止めをもらったが、落ち着くまでに二週間程度かかるだろうとのこと。実際、足を締め付けて固定するウェーディングシューズなんて絶対履けないと思った。
しかし週末の前夜、しっかり釣行準備をしていたのだから、確信犯だな〜。週末の朝にはだいぶ痛みは落ちつていたが、果たしてウエーダーやシューズを履けるのかは自信がなかった。 そして川に向かい、到着してから履いてみて、痛い方の足の靴下を脱いで、少しでも締め付けを緩めてだいぶマシになった。
ヘビロテは YOASOBI の 「あの夢をなぞって」。
葉がなくて開けた感がある流れ。春先の風景。
有望ポイントも沈黙したままだった。更に上流へ進むか、一度車に戻るか迷った。
まだ上流にもポイントはある。しかし雰囲気的には解禁からの五日間で、この辺りのヤマメも抜かれてしまった可能性は高い。 話を聞いた人の「釣り人がまばら」と言うのはあるだろうが、狭い区間のヤマメなら一人があらかた釣り切ってしまうことは有り得る。 と、また滑って尻餅をついた。先へ進むか考えていて不用意に一歩を踏み出してしまった。 釣りの戦略と歩きの不安はどうしても同時に頭に置いておかなければならない。 僕は更に先へ進むことにした。確かもう一箇所良さげな開きがあるはずだ。 そしてそこでぴちゃっと小さくフライに飛沫が上がった。小さいヤマメが釣れるには釣れた。 思い出した。この日は新しいロッドの初釣行でもあるのだ。せめてもう少しサイズアップさせたい。 少し先の流れにフライをキャストした。川底が石が多く安定しない。足に痛みが走った。バランスが崩れる。 フライに魚が出るのが目の端に映ったのと体が崩れ落ちるのが同時だった。僕は三度目の尻餅をつきながらロッドを高く掲げた。 水もそんなに冷たく感じない。風も弱めで恐れていた花粉も大丈夫そうだ。
まずは新しいロッドのファーストキャスト。新調したラインを乗せて振るのは、この時が初めてだった。 目の前の小プールへ一投目、ラインがロッドに乗る。重過ぎず乗った感が薄くもない。これはいい。 ロッドとラインのマッチングは良好だ。僕は丁寧にゆっくりとロッドを振った。
この日はCDCをバインドしたフライで通した。
シューズにも問題があった。昨年買ったものだが、ラバーソールで、過去使ったものより価格抑え目の製品たった。春先の里川を歩くには心許ない。
川に入る前に近くのログハウス施設の管理者の人と話をした。 解禁日はまあまあ釣り人はいたが、それ以降はこの日も含めてまばららしい。 解禁から週末までの五日間は分散だけでなく、釣り人の出かける意欲も削いだのかもしれない。
珍しくコーヒー。外で飲むとうまいや。
maekawacraft 7'3" #3 3ピース 唐竹ロッド出撃!!
火の始末は充分すぎるほど注意して。
最初のポイントで反応なし。次へ向かおうと思うが、やはり川を今の足の状態で歩くのは困難を極めた。
痛む足の方は踏ん張りが効かない。そっち側にバランスを崩したらそのまま倒れそうになる。おまけにシューズそのものも滑りやすいから危険極まりない。 あまり歩けそうにないが、少し先にある有望ポイントまでは行きたかった。 (あっ!)っと思った時には、尻餅をついていた。言わんこっちゃない。尻餅で済んだんなら運が良かった。 |