2021 釣乃記
第拾玖話  夢の続きの釣り
スッと意識が戻った。目が覚めた。なんだったろう? 一瞬今の状況がよくわからない。
ああ、そうだった。釣りに来て河原で昼飯を作ろうとしていたんだった。アルストで湯を沸かしているうちに眠ってしまった。

豪雨で渓流へ向かう道路が通行止めになっていた。開通はこのエリアが禁漁になる九月一日の予定。
しかしネットの道路情報を見ていくと、少し大回りだが迂回して釣りエリアへ行くルートが生きていることがわかった。
アシがはびこっていると攻め切れなかったりするのだが、濁流で根こそぎ流されて障害物がないと、攻めやすいが魚が身を潜めるものもないのだから、魚がいなかったりすぐに警戒されて逃げられたりする。痛し痒しだ。
全く障害物のない平坦な流れにフライを落とす。流れるフライを目で追うと、スッと魚影が走った。合わすと掛かっている。なんちゅうわかりにくい出方じゃ。寄せると艶やかな魚体のアマゴ。よく濁流の大増水を生き延びてきたな〜。水に洗われて魚体も格別にきれいだ。
この川のポイントも以前と比べるとかなり様変わりしていた。アシがなくなっただけでなく、プールは埋まって浅くなっていたり逆に新たな深みができていたりした。しかし全体的には平坦な流れになっていた。油断しているとなんでもないところにいたりするから、チャンスを逃しかねない。
小さいが艶やかなアマゴさん。
今年渓流ラストもぐもぐは、サッポロ一番塩ラーメン(*^^*)
通り慣れない道だが、結果的には距離も所要時間もいつも通る道と大差なかった。
行く手段はあり禁漁前最後の週末ということを考えると、釣り人は結構来るかもしれない。実際、目的の川の中流部には釣り師の車が1台停まっていた。
僕の入りたい場所に車はない。僕は急いで支度をして川に降りた。
改めて川をじっくり見る。水はやや多いくらい。アシに覆われていた場所はアシが綺麗になくなっている。川底の堆積物も洗われ、綺麗な川底が見えていた。
夏の締めくくりにこんなヤマメが釣れたらもう十分です。
なんだかバテた。ひと月ちょっと前にKSさんと源流釣行した時は相当歩いたが、平気だったから自信がついていた。豪雨でしばらく渓流に来ていなかったが、それだけでなまったのか?

川のそばでの昼飯も今期最後になる。去年は袋麺+カレーを作ったりしていた。よくやったな。
最後はやはり袋麺。チェアに座りアルストにクッカーを置いて湯が沸くのを待つ。アルストは加熱がゆっくりだから、自然とまぶたが重くなった。
今、何かと話題のオニヤンマくん(実物(^^;))。
まだ平水より多め。釣りごろの水位です。
ヒルガオは地下茎が長いからしっかり残ってます。 
川の上の道路は車1台がやっとの狭い道だが、割と車やバイクが通っている。普段は地元の農作業・山仕事の人たちが通るだけだが、きっと崖崩れの迂回路でこの道を選んだ人たちだろう。
以前はまあまあ大きめのプールだったところがすっかり埋まっていた。それでも流れの筋が真ん中にあり、浅いなりに良いポイントになっている。
筋に沿って流れるようにキャスト。少し外れたところに落ちたが見失った。ピックアップするとググンっとロッドが曲がった。
掛かった魚は思いのほか浅瀬を走り回った。ピックアップで掛かったんだが、1匹は1匹。
ネットを差し出すと嫌がってまた走る。バンブーロッドがよく曲がっている。二回すくい損なって、ようやくネットに入った。うっすらピンクの魚体に赤いラインの尾ひれ。いいヤマメだ。
艶やかな魚体を触ろうと手を伸ばしたら、尾ひれで派手に水しぶきを掛けられた。
と、そこで目が覚めた。クッカーの水は沸騰し、アルストの燃料はなくなっていた。僕はのんびりと袋麺を作り直すことにした。
夢の続きの釣りなのか? 釣りの続きの夢なのか?(^^;)