2021 釣乃記
第拾陸話  アジャストする川へ
「通らせてもらっていいですか?」と聞くと「どうぞ〜」とすぐに返事をしてもらえた。
農作業用の道を通らせてもらい、川へ降りる階段へ。ここの農家の方には何度も挨拶している。
(この人また来なすったが釣れるんかいのう?)なんて思われているかもしれない。
川へ降りた。水量は十分にある。僕はこの場所の増水時の王道ポイント、流れの対岸のきわへドライフライをキャストした。
数投後、対岸の小さな入江状の緩流部にフライを落とせた。するとピチャッと水面が弾けた。
今回は渓流は一人で行くことにした。釣りができるかどうかもわからないし、午後からは雷の予報も出ていた。
ところが行きの道中に横の川を見るとそれほどの大増水というほどでもない。とはいえ僕のよく行く川は流れが太い。あそこはおそらく通常の流れは白泡が立っているはずだ。
そういう時によくなるポイント。去年見つけて二度ほどいい釣りができた。先週も来たのだが、平水だとカワムツしか釣れない場所だ。そして今回、狙い通りの増水具合。数投後に対岸の小さな入江状の緩流部でピチャッと弾けた。
合わす。対岸で水しぶきが上がり、グンんっと重さがロッドに乗ってきた。
これはなかなかのサイズだ。ラインを手繰るとこのポイントのお決まりになっている、流心にヤマメが入り込んでのファイト。
晴れ間が見えてきた!?
君もいいヤマメなんだけどね〜(^^;)
実は先週、ちょっとだけこの同じ川へ釣りに来ていた。結果はチビ一匹の燦々たる結果で、釣乃記の更新もしなかった。
そもそもこの時期のことだから雨の降りよう、増水加減が釣りのほとんどを左右する。
先週はその意味でダメだった。渇水ではないがほぼ平水くらい。
平水では良型は望めない。多少の増水は予想していたのだが、全くの大外れだった。

そして週の半ばにかなりの大雨が降った。
瀬はほぼ全面に白泡が立っている。
流心をまたいでこちら側まで寄せてきた。するとまた流心に向けて強く泳ぎ出す。タフだ。
ようやく魚体が見えるところまで寄せた時、プッと軽くなった。
(ばっ!)バレた・・・え〜、バレた〜。
僕は一気に身体中の力が抜けていくのを感じた。

まだ川に着いて十数分しか経っていない。気を取り直そうとするがあまりにもダメージが大きい。
その少し上流でなんとか一匹キャッチ。さらに上流は流れが荒れていて行けない。
あん? なに見てるにゃっ?(^^;)
緩い流れに大物が避難しているはず。
あ〜、かゆいかゆいにゃ〜。 
在宅勤務はまだ続き、週末までも行動を自粛していたら頭も体もおかしくなりそうだ。
そんなことになったら本末転倒なので、やはり釣りだけは行かさせてもらうことにした。
週の始めにKSさんと週末はチヌ釣りに行こうと約束していたが、週半ばの大雨で川は大にごりになり、河口も湾もにごりは消えないだろうし、ゴミの漂着で釣りは無理だと判断した。
この時僕が思ったのは渓流のヤマメ釣りだった。しかし川がどうなっているか全くわからない。
僕は降りた場所から上がり、別の場所へ向かった。そこでも一匹釣ったが、バラした後の一匹と同じくらいのサイズだった。結局それが最後でその後は釣れなかった。
先週の釣れなかった釣り、在宅勤務のリフレッシュ、豪雨で被害が出たあとの釣り。色々な調整をこの日良型を釣ることで落ち着かせようとしていた。
いや、100Km走って川に出向いてきたこともちゃんと調整になっている。僕はあとに残った自分の欲をアジャストするために、次のポイントへ向かった。



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フラットなしかし明らかな増水。魚の避難場所を探す。