F.F.雑感
其ノ五百三十二  泥と濁りを味方に
土手から川は見ると割と澄んでいる。(これはイケるじゃないか)と僕は釣りができそうだとわかり安堵した。
この日は中潮で、45と47を釣った時と同じ条件だ。違うのは前の日に台風が通過したと言う事。雨もひどく降ったので、河口は上流からの濁りが入って釣りにならない可能性があった。
僕は勇んで砂地のフラットを歩いて中央の流れの際まで行って、あっと思った。
(濁っている。足元も見えない)
土手から見た澄んだ水はどういう事だったかと思ったが、干潟の岸に近いあたりは流れが緩い。濁りの水をよく見るとかなり粒子の荒い砂粒が流れているようだ。流れが緩いところでは粒の重量がまさって沈殿するから早く澄んでくるようだった。
中潮の下げ潮なので流れが早い。濁っている流れにキャスト。広くスィングさせて探っていく。キャスト、スィング。この濁りの中で果たしてチヌはフライを見つけてくれるだろうか? いや、それよりもこの濁りが流れ出してくる川に、チヌは遡上してきているんだろうか? 濁りを嫌って上がってきていないのではないか? だとしたら魚のいないところをただキャストしているだけになり、こんな徒労はない。
僕はそのことに気づいた途端、目の前の流れには1匹の魚もいない気がしてならなかった。やはり台風翌日は早過ぎたか。
一週間前の釣り終わり。釣れずに帰るのはやっぱり冴えん(~_~;)
この日のキビレはほぼこのフライで。お世話になりました。
少し後戻りした。戻ると水際でもあまりハマらない。またロッドを水に浸けて泥を落とした。
水面に引き波が見える。まだまだ例のレーンに潜んでいる。続けて食ってくるのだからこのフライは今のキビレにかなり合っている。
引き波近くへキャスト。くるぞくるぞと思いながらリトリーブするとイメージ通りにググッときた。またエラアライ。そしてぐいぐい潜り込んでラインが引き出される。まだ少しガイドに泥が残っているのか、シャリシャリと音が止まなかった。
足元が見えないとエイが居るかもという恐怖感が湧いてくる。慎重に歩くがそれにしても濁りがひどい。
前回ここにきた時はもちろん濁りはないし、晴れてうまい具合に水の中がよく見渡せ、クルージングするチヌがたくさん見えた。
そのたくさんのチヌに相手にされず悔しい思いで日没を迎えた。
二週間後のこの週末もその時と同じような小潮なので、その前の中潮でなんとか釣りたいと、台風後にも関わらずやってきた。
体高と尾鰭がパワーを物語ります。
エラアライ、水面に激しく飛沫が上がった。いた、いてくれた。僕は掛かったこともだが、釣りが成立したことがありがたかった。
ラインを巻き取りリールでやりとりする。荒っぽい首振りのようなファイトはキビレならではだ。
岸に寄せて魚体を抱え上げようとすると、キビレが暴れて僕は思いっきり泥をかけられた。

どうやら岸際と濁りの流れの間のレーンにキビレが身を隠している推測は当たっているようだ。僕は岸際をさらに先へ進んだ。
エイガードに泥が付着し重量と抵抗でかなりの運動量(^^;)。
流れが緩く泥が沈殿して水が澄んでいる場所は岸寄り過ぎて浅く、ベイトがピチャピチャしている程度だ。
じゃあそこより少し離れた水深のあるレーンなら濁りも流心より薄いんじゃないだろうか? と頭で想像してその辺りをフライが通過するようにキャストした。
リトリーブするとベイトが跳ねて逃げ回る。するとググッと引き込まれた。
(ベイトが掛かった!? こんなに引くのか!?)
そんな訳はない。キビレだ。
ズブズブっとエイガードをつけた足がハマっていく。こりゃまずい。僕は少し水際から離れた。
すぐ先の、岸から少し離れたレーンに引き波が見えた。いるような気がするが、ここからキャストするとラインが干潟の泥部分にも落ちる。ラインに泥がつくの嫌だなーと思いながら投げるとすぐにアタリ。手繰るとたい焼きサイズのキビレが掛かっていた。たい焼き君をリリース。続けてまたたい焼き君サイズが掛かった。リリース。
ラインにかなり泥がついた。キャストして水中をリトリーブすれば落ちるだろうがガイドにも泥がついているので、リトリーブ時にシャリシャリする。だからロッドも水に浸けて泥を落とす。
さらに先へ行きたいが、泥にハマりたくない。そうなるとどうしても水際から離れた固いところを歩き、その結果ラインとガイドに泥が付着。そもそも40cmサイズが掛かったらハマる水際に行かないと取り込めない。これはまずい。
キビレさん、やっぱり濁ってない水が良いですよね?(^^;)