2021 釣乃記
第捌話  新緑・小渓・雹・甘子
枝が邪魔でその先のプールにフライを投げられない。一か八かでキャストするとやっぱりティペットが枝にかかり、フライはその先へ落ちた。
と、フライに出た。合わすとテンションがかかりティペットは枝から外れた。
(うまいこと釣れた)僕はアマゴを引き寄せながら思った。

寒気が入ってきて全国的に荒れ模様のこの種末、スマホの時間ごとの天気予報と雨雲レーダーを気にしながら釣りに出かけてきた。
パラパラと雨が少し強くなった。本降りにはならないでくれよと祈りつつ、先へ進むといい感じの小プールが現れた。僕は慎重に距離を見定めてキャストした。少し手前に落ちた。魚は出てこない。もう一度キャスト、また手前。
僕は少しムキになり、強くバックキャストを送り出した。フォワードの時、グッとロッドが止まった。上空の木の枝に引っかかった。糸とフライをやり直し、今度は枝に注意しつつバックキャスト、また引っかかった。そんな。
またしても糸とフライをやり直し、少し前に出て投げたが結局ここでは釣れなかった。この先、徐々に狭くなる。
そしてこの場所を境に反応がなくなった。横の林道からは降りようと思えば降りれる所はいくつもある。ひょっとしてこの辺りは釣り人が入っているのか? 雨は落ちてこなくなったが、あたりがだんだん薄暗くなってきた。
新緑に囲まれた小渓。引っ掛ける気配満々です(^^;)
むっちりボディのアマゴさん。もっと大きくなりなはれ。
あっという間に雹の土砂降りになった。カッパは持ってきていない。雹と言ってもやはり濡れる。
僕は林道に上がれる場所へ向かった。もうこうなると慌てても仕方がない。
上がる場所の先にポイントが見えた。今更だが投げるだけ投げてみた。一発で出た。なんだ? 雹が水面をこれだけ叩いているのに川の中は関係ないのか?
同じ場所にもう一度キャスト。また出た。今度は引きが重い。
僕とネットですくったアマゴは、一層強まる雹に叩かれ続けた。
最初は例によって本流へ向かった。週の半ばに雨が降っていたので、やや増水していたが濁りはない。
オオマダラらしきカゲロウが飛び立っていくのも見える。しばらく待ったがライズは起こらない。ここなら出る、という流れにフライを投げたが何一つ反応はなく、川筋を強風が吹き始めたので、本流から上がることにした。
風があるなら山間の小さな支流が影響が少ないかもしれない。僕は北部へ向かった。
一応今期でいちばんのサイズ。この状況で(^^;)
そして絨毯爆撃のように雹が降り始めた。
目的の小渓流は標高がやや高い場所にある。案の定、かなり気温は低かった。ぽつりぽつりと小雨も落ちてきている。
川はひっそりしていて、釣り人の気配はない。横に林道が通っていて、GW中はオフロードバイクが走ったりするのだが、この日の寒さではそれもなかった。
王道ポイントではなかなか反応がないまま、小さな流れの巻き返しで一匹、ゆるい流れの中から一匹、流心の脇から一匹釣った。
魚はいるが盛期のポイントではない。この日は寒いから特にそうなのかもしれない。
道の駅ニャンコ先生の堅牢なご自宅。
寒いのでマエグロさんもハッチして後悔?
今回の簡易もぐもぐはどん兵衛限定。 
遠くで雷の音がした。予報でも雷は出ていたが、ここまで大丈夫だったから安心していた。
反応もなくなったから、上がった方がいいとも思ったが、確かこの先に良さげなポイントがあったはずだ。
小雨が少し強い降りになってきたが雷は遠のいたような気がしたので、僕は先へ進んだ。
だが、良さそうなポイントはまたしても反応なし。そして更にあたりが暗くなり、パチンっと何かが帽子のつばに当たった。
雹だった。
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