2022 釣乃記
第肆話  増水と、ライズのない川
うーん、水が多い。分かっていたことだが、心のどこかでなんとかなるんじゃないかと期待していた。
実際、なんとかなりそうなポイントに心当たりはある。そこへたどり着くまでがしんどいが、釣れるんだったら行くしかない。
増水したらヤマメは緩い流れに避難して、徐々に元に戻るんだろうと思う。避難している流れを見つけさえしたら、あとはフライを送り込むだけだ。
心当たりポイントに着いた。増水でポイントが荒れているが、なんとか釣りになりそうだった。
場所を移動するのに、流れの中は増水で歩けない。流れと並行して葦の生えたところに小さい溝ができていて、そこを歩いて先へ進んだ。次の目当てのポイントは増水の激しい流れに完全に消されていた。
そして本命のポイント。ここが一番期待できる。この日、増水だと分かっていてもやってきたのは、このポイントがあるからだった。水位は高いが流れは荒れていない。予想通りだった。ここなら出るでしょ?
背後や上空を確かめ、
慎重にキャスト。やや手前だが居たら出る。・・・出ない。その奥へ思い切ってキャスト。飛びすぎて左岸の草に引っ掛かったが、ゆっくり引いたらスルッと水面に落ちた。一番いいところ! ・・・出ない。
ああ、出ないのか。増水と分かっててもあえて出かけてきたのに。出てくれないのか。
この増水で足の筋力アップは間違いなし(>▽<;)
四週連続チビヤマメさん。いや、釣れてくれただけで感謝です(^^;)
Yが釣ったこの川の上流域で増水の影響の少ない場所を探すしかない。僕は車で上流へと移動した。
時刻は昼をとうに回っていたが、僕はいつもの昼飯の余裕はなく、持ってきた巻き寿司(前日にスーパーで半額)をかぶりつきながら川へ降りた。
(!)そこで僕は今年初めてたくさんの水生昆虫が飛ぶのを見た。
小さいカディスが多いが、中型のメイフライも飛んでいる。そして抱卵しているものもいる。
見ていると増水の早い流れに卵を投下している。ちゃんと孵化するんだろうか?
先週と同じく雨のあとの週末。
土曜日の雨量は結構なもので、日曜日は大人しくしていた方が無難だと分かっていた。
しかし気温が18度くらいまで上がる予報だし、家でじっとしているなんて、土台無理な話だった。

増水でもイケそうなポイント。上に木があるからサイドキャストでフライを投げ入れる。出ない。さらにしつこく投げるが結局出なかった。
ドライフライには出ないのか、それとも魚がいないのか。
HOT WAX ボディのCDCダン。ウィングは大ぶりにしてスピナーとしても。
上流とは言っても増水は増水でした(^^;)



                 戻る 釣りTop 次へ
さて困った。他の増水でもイケそうな場所もおそらくこんな状況だろう。川を変えた方がいいような気がした。
頭に浮かんだのは、先週僕が入った川で、釣友のYが太ったヤマメを釣っていたことだ。そこが増水でもできそうな流れなら。
僕は今いる場所から近いその川へ向かうことにした。
(聞いてから行っても大抵遅い)と心の声が聞こえたが、着いてみるとやはり増水で手が出せそうになかった。
いかんいかん、このままでは釣り場迷子になってしまう。
このボサの下にいる・・・ような気がするんだが。
梅に水滴。川沿いにもようやく春の気配が。
河原にスノードロップ。球根が流れ着いて育ったのか? 
上流域は川幅が狭いからより増水の影響が出てポイントも消えていた。それでも探すしかない。僕は魚が避難していそうな場所を求めて道路の上から見て歩いた。
流れが緩そうな場所がいくつかあり降りてみた。ライズでもあれば必ず釣るんだが、これだけ虫が飛んでいるのにライズは全くない。
目に止まった対岸のボサの下の緩い流れ。フライを投じると、ここまで全く気配を見せなかったヤマメがゆっくりフライをくわえた。
僕はこの日初めてフッキングさせるためにロッドをあおった。