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2022 釣乃記
第伍話 ようやくの春、桜とアマゴと
思い返すと今年の渓流の釣りは、四回行っているうちの三回が日曜日だった。そして今回の釣りも日曜日とあいなった。
市内の桜は満開で、釣りエリアの桜が咲くのは過去はだいたい二週間遅れだったのだが、今はほとんど同時に咲いている。 どちらかが早まったか、遅くなったか? 何十年もの間、解禁後の二ヶ月くらいはこのあたりに通っているが、だいぶ環境は変わってきているのがわかる。 二番目に入った本流ポイントの場所には地元の人たちが清掃作業をしておられた。僕が車を止めた傍には年配の男性が二人、刈った草の片付けをしていた。
「釣りかね?」 「はい」 「ここらじゃあ釣れまーがー」 「それが去年はまあまあ良かったみたいで」 「そうか?」 と、話をしていると、もう一人の人が 「何で釣るん?」 「毛鉤です」 「フライ?」 「あ、はいそうです」 と、話が続いた。その人は以前は釣りをしていたそうで、この辺りは確かにいいと言っていたが、夕方でないと釣れないんじゃないかとのことだった。確かにそうかもしれないが、この時期ならハッチが日中にも起こる。先週の最後の川がそうだった。 「たくさん釣りんさい」と言い、二人は作業用の軽トラに乗り込んで去って行った。さて、じゃあやるか。 しばらくハッチやライズを待ったがその気配はなく、これ以上待ちきれず目ぼしいところを流してみた。それだけで2時間を費やした。僕は一旦ここを離れることにした。昼にはまだ早いが昼飯を食べておこうと思ったからだ。 本流沿いにある、桜の木が多く植えられている公園で準備をした。桜は八分咲きと言ったところで、木の下の据え付けのテーブルとベンチを使わせてもらう。 ラーメンを煮ていると「半分使わせてもらっていいですか」と声をかけられた。 CX-3くん、桜が満開ですよ。
今年初のライズに遭遇。そしてその一匹を。
朝の最初のポイント。数年前にここに来た時と川底の地形はかなり変わっていた。
細長いプールを流しながら流れ込みまで行き、そこを流すと水面にくるっと魚体が飛び出した。 (こんなの合わせられるものか)っと僕は思いながらロッドをあおった。 ぐんっと重たい手応え。乗ってくれたっ! 車に戻り、僕は犬の散歩の女性に釣れました、と上機嫌で返事をした。 四月に入ったことだし、この日は本流をやってみるつもりだった。
最初に狙って入った場所は、午前中のまだ早い時間なのもあって、ハッチは極小の虫がたまに目に付く程度だった。 桜の咲く土手の道は、地元の人たちがウォーキングや犬の散歩で行ったり来たり。 僕はそそくさと支度をして川へ降りた。 「釣れましたか?」と、犬の散歩の女性が声をかけてきた。 僕はいつになく上機嫌でその問いかけに答えた。
まだ若い土手の桜。立派な桜になるんだよ(ヤマメにも同じこと言ってる(^^;))
迷った挙句、結局僕は近くの支流の上流域に入ることにした。お昼前後は本流のハッチはないと読んだ。上流をやったあと、さっきの二番目の本流ポイントに行ってみよう。上流は昼過ぎだと午前中に誰か入っていそうだ。
向かった場所の川沿いに案の定釣り師らしき車が停まっていた。 僕はその車のさらに上流にかなり距離を取って入った。ここも先週最後に入った川同様、カゲロウがかなり飛んでいた。 釣り上がっても反応はなく、新しい足跡があった。 次から次へとカゲロウの群飛が始まる。
本流を攻める。水位は落ち着いていて、イケそうだ。
産卵を終えたカゲロウたち。
さらに上がると上流域にしては広めのプールがあった。しかもライズしている。
2度3度、投げると魚が出るが乗らない。さらに投げるとボソッとフライが消えた。合わす。赤い魚体が水面でうねった。 朱点の鮮やかなアマゴだった。 この川はこいつで十分、僕はまた本流へと取って返した。 本流は風が強まっていた。そしてその風にカゲロウが飛ばされてくる。これは、と期待して待ったがライズは始まらなかった。 「どうぞどうぞ」と僕は返事した。あたりを見回すといつの間にか花見の人たちがこぞってやってきていた。すでにほかのテーブルは埋まり、シートを敷いて座り込んで弁当を食べている家族連れもいる。
穏やかな天気、桜も咲いてなんとものどかだ。花見とは言ってもグループごとに距離は空いているので問題ない。 僕は食べ終わるとすぐに片付けて車に戻った。さて、ハッチはどうだろう。まだだったらそのまま待つかどうかが悩ましい。
花見もぐもぐタイムのメニュー(*^^*)
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