F.F.雑感
其ノ五百五十八  流れ藻と雑誌が連れてきた
なんだかんだでメバルに行かない週末が3週間続いた。
それはそれでいいのだが、この週末は潮位差の大きな中潮なので、そろそろ行っとこう。
冷え込む朝になんとか起き出し、やっぱり朝まづめは無理と判断しつつ、家を出た。雪も降ったりしたが積もりはせず、日中はいくらか気温も上がりそうだ。

市内から近めの島、初釣りで行った港へ向かった。
初釣りの時は出来過ぎのような釣果で大満足だったから、いやでも期待してしまう。
フライの雑誌124号が届いた。今回の号は春の釣りが特集で、僕も表紙や特集記事と写真で参加させていただいた。
全国の春の釣りが持ち寄られていて胸が高鳴るような写真や記事で埋められている。解禁前の釣り人の心を捉えて離さない一冊だ。あと一週間ちょっとで三月になろうかというタイミングだから、無理もない。
去年の十二月初旬から雑誌用の写真選定や文章書きをしていたので、特に僕は今年の解禁は例年以上に強く意識している。渓流のフライのタイイングだって自分でも感心するくらいよく巻いている。ただ、気持ちばかり先走っても、解禁当初の釣りは厳しいものになることは予想している。それでも行かなきゃ気が済まないのだ。
でもまだ二月。今年になってからのメバルは回数が少ない。こっちはこっちで渓流に行き出す前にもうひと釣りしたかった。

初釣りの時の港に着いた。こちらも空いている。海を覗くと、先程の港では見えていたスズメダイすらいない。全く魚影のない海面だった。僕はなんだか急にこの日の釣りの歯車が狂い始めたような気がしてきた。
そして、僕のやろうとしているポイントのすぐ前に、不穏な動きの漁船が一隻。確か2年前に遭遇したことがあるが、防波堤ギリギリを網を引く違法操業の船がいたのを思い出した。
フライの雑誌 春の号、到着です。春の新酒も(^^;)。
全くいきなり活性化。なんなんですか?(^◇^;)
(あっ!)と声が出てしまった。僕は行き先を間違えていた。
今通っている道で向かうのは、前回地震の後に行った港だ。こっちじゃない。
どうするか? 引き返して初釣りの港へ行くより、このまま行く方が近い。
ここまで来たんだからこのまま行ってみるか。あの港もこの冬はもう一つ調子が出ていない。様子を探っておいて損はない。
到着した時は誰もおらず、海は満ち上がり途中のいい感じの潮位だった。
海岸もぐもぐタイムで海の様子が変わるのを待つ。
「ナマコを取りよるんよ。防波堤から何mか外でやらんといけんから違法は違法よ」と、この港の漁師の方に教えてもらった。
以前みたいに防波堤ギリギリで網を引いた船は魚を取っていたように感じたが、今回はナマコで網を引くルートも微妙に違う。
それでも近いところを行ったり来たりするから、僕も気になって落ち着かない。
海は海で全く魚の気配がない。これはもうこの日はダメだな。
僕はせめて外で昼ごはん食べるだけでもいいか、と自分で自分に予防線を張り始めた。
もぐもぐ中に、不穏な船が・・・。
大急ぎで場所変え。慌てて落ちるなよ〜(>▽<;)
どっからかやってくる流れ藻。 
海面には例によってスズメダイが浮いている。ひょっとしたら、と僕はこの冬まだ成立していない海面のフライを試してみたが、今回も反応なし。
すぐにシンキングに変えて探るがやはり反応がない。そもそもメバルが産卵後の離岸から戻っているかどうか微妙な時期ではあるし、メバルらしき魚影も見えない。
(場所を変えるなら少しでも早い方がいい)僕は待てば状況が変わるかもしれないとわかっていても、間違えてここに来たことの不安を消せなかった。大急ぎで初釣りの時の港へ行くことにした。
反応なしのままキャストとリトリーブを繰り返していたら、いつの間にか流れ藻が防波堤の際に流れ着き始めた。
すると、今まで全く見えなかった魚影が見え始めた。全く急だ。
ゴツッとフライを引ったくるようなアタリ。こんなにも状況が一変するのか。立て続けにメバルが釣れた。流れ藻が時合いを連れてきたようだ。

帰ったらフライの雑誌を読もう。こちらは雑誌が連れてきた春の気配に満ちているはずだから。
時合いがすぎるとまた沈黙。防波堤内側で小魚でも物色します(^^;)