2022 釣乃記
第陸話  本流迷走、あの谷へ
日曜釣行、五回目。週一回だけの休みだと、行き先でかなり悩む。
やっぱり翌日が仕事なのを鑑みて今回は家から近めの本流に狙いを絞って行くことにした。

去年から何度か通っている支流との合流点。ハッチはちらほらあるが、多くはない。
少しライズを待ったが、堪えきれずドライフライを流してみた。
すぐに本流チビアマゴが釣れたので、これはイケるのか? と思ったがあとが続かなかった。
さらに上流方向へ移動して三カ所目、別の支流との合流点。この場所に来たあたりから徐々に気温が上がり始めた。
天気は快晴、朝の最初のポイントではやや肌寒い感じでウェーダーを通して伝わる水温も低そうだった。それがみるみる暑くなってきた。僕は一枚脱いで顔は日焼け止めのサンマスクで覆った。

この流域、釣り仲間達がけっこう釣りに入っていて、いい釣果をあげた人もいる。僕もそれに感化されていくぶん焦っていると言えなくもない。
前回の釣りでは朝イチに本流でなんとか満足できるアマゴを釣ってはいるが、その満足度も一週間経つとリセットされてしまうようだ。自分の楽しみで釣りをしている訳だが、人に自慢したいとか、大物の強い引きを味わいたいとか、釣魚のいい写真を撮りたいとか、あくなき欲は尽きることがない。
本流チビアマゴさん。きっとこれから大きくなるんだよね〜。
今季ここまで六回の釣りのうち、火器を使ったもぐもぐは四回実施。
この流域の本流筋の持ち駒は全て使い果たした。あとは適当に勘で入るくらいしか手がない。
腹も減ったし、思いもよらぬ暑さでバテた。休息が必要だ。
頭に浮かんだ、ここから割と近い小さな谷。ゴギがいる。
そこで昼飯がてらゴギをつついてみよう。僕はすぐにその谷へ向かった。
急峻な山の斜面を駆け下るようなその谷は、堰堤がたくさんある。その仕切られた流れにゴギが生きながらえている。
先程までの本流とは真逆のロケーションだ。
車で少し移動して、次のポイントへ。プールへ流れ込む緩い瀬がいい感じの場所だ。
岸際の緩い流れに、桜の花びらがたくさん浮いていた。もう桜も散ってしまったなあ。
と、よく見ると桜の花びらばかりではなかった。シャックだ。何のシャックかはわからないが、相当の数だ。
朝イチでスーパーハッチがあったのかもしれない。
すでに時遅しかと思ったが、ちょっと待っていたら、パシュっとライズした。
帳尻合わせ(←失礼(^^;))のゴギさん。標高の高い谷で磨かれた極彩色です。 
そして、本流午後の部も、苦戦が続くのでした(^^;)
今は虫はちらほらだが、水中にはなにかいるのか?
わからない時はとりあえずサイズを落とす。僕は大振りのCDCパターンから小さめのダンに結び変えてキャストした。
出ない。もう一度流してみる。反応なし。と、流したところでライズした。
これは合っていない。フライが完全に無視されとる。
CDCのかなり小さいダンに変えて投げたが、ライズはそれっきりなくなった。
桜の花びらとシャック。どちらもたくさん浮いてました。
フラットな瀬でライズっ!。気持ちは高ぶるのだが・・。
ドライだけでなく、ウェットも使って。 
付き場の小さな溜まり。フライを落とすと二匹の影が飛びかかった。空振り! 
(もう一度出てくれ)と、僕は祈りながらキャスト。出た!
狭い溜まりを強い引きで抗い泳ぐゴギをなんとか寄せた。ものすごい濃い朱色の魚体が横たわった。

昼飯を食べ、ようやく落ち着いた。標高は高いから、本流筋の暑さからは逃れられている。
でも、午後のハッチが二カ所目のポイントで始まるかもしれない。
僕は尽きない欲に動かされて、本流に戻ることにした。



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三カ所目はやや川幅が狭まっているが、その分流れは急だ。所々の緩流帯にアマゴが潜んでいる。
そこを丹念に流してみるが、一度の反応もなかった。
確か去年の同時期、ここでは大型のカゲロウが飛んでいたが、今回は全く見ない。
僕は二番目の場所のシャックを思い出した。
カゲロウたちはこの日の日中にかなり気温が上がるのが事前にわかっていたから、早朝にさっさと羽化を済ませたのではないだろうか?
こうなったらもう、あそこへ行くしかないか。