2023 釣乃記
第拾壱話  五月のゴギの谿へ
GWの終盤は雨で釣りはおあずけになった。
それから一週間、また雨の土曜日となり、僕はまた引きこもった。タイイングする時間はたっぷりできたが、時間があるから巻くというものでもない。
それでも重い腰をあげて巻き始めたのは、T社新製品マテリアルを使ったテレストリアルパターン。とくれば、増水の本流はあきらめて、支流上流域のゴギ狙い、というのが翌日のプランのひとつだ。
本流は増水具合が気になるが、行ってダメだと支流に出遅れることになる。 
ゴギの谿に向かう引き金になった、新たに巻いたテレストリアルのフライ。
ひとつ目はT社のHOT WAX BLACKを使ったアント。吸水せず浮力のある
HOT WAX だが、アントのボディだけでフックを浮かせられるほどではない。パラシュートのハックルやCDCのウィングなどは必須だが、HOT WAX のボディは蟻の質感をよく表せている。
もうひとつがT社のストレッチフォームを使ったビートル。伸縮するフォームなので引っ張りの加減でボディの太さの調整が容易だ。アンダーを太めにしオバーシェルのフォームを緩く巻き止めれば、リアルなビートルになる。
せっかく新しいマテリアルで巻いたのだからその使い勝手や反応をみたい。増水のこともあり、ゴギの谿行きは迷わなかった。
ただ五月にテレストリアルというのはちょっと早い気もする。まだまだカゲロウのハッチは見られるし、この日も釣りながらカワゲラのハッチが始まっていた。
引き続きビートルをキャスト。ゴギの居そうな反転流。うまく流れに乗せたら魚影が超高速で出た。 合わすが掛からず。なんだかスレたヤマメのような出方だ。
また雨で始まる週末。こんな時くらいはゆるゆるします(*^^*)
鬱蒼とした緑に囲まれているゴギ谿。
岩が大せり出した場所。流れが岩の下をくぐっている。そこの上流側にアントをキャスト。アントは岩の下を流れているはずだが暗くて見えない。
っと、水しぶきが暗いあたりに上がった。合わすと重くロッドがしなった。

四時間近くひたすら釣り上がった。ずっと離れていた道路が近づいてきた。
晴れたり曇ったりで気温はあまり上がらなかった。この谿のゴギたちには今がやっと春がきたくらいかも知れないと僕は思った。


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翌日、僕は迷わずゴギの谿へ向かった。この川は何年も来ていなかった。それだけに期待も大きい。急な斜面をゆっくり降りて川に立つ。とりたてて増水しているふうでもない水位だった。
前日に巻いたテレストリアルのビートルとアント。まずはビートルの方から結んで投げた。
水の落ち込みから広がる小プールの流れのゆるいあたりに落とすとゆっくり魚影が近づきくわえた。合わす、重くロッドがしなる。20cmに満たない、この川のアベレージサイズのゴギが釣れた。
この日イチのゴギさん。もうすぐホンモノのアントが流れてきますよ(^^;)
ビートルとアント。黒いフライにはまだ早い気も・・・。
どんどん釣り上がっていく。こういう釣り上がりは今年初。まだ五月だから暑くない。というか雨あがりの渓は冷んやりしていた。
次のポイントでまたアベレージ。魚体の色は濃い。石の陰に潜んでいたやつに違いない。
まあまあ広い溜まりが現れた。こんなポイントはこの川では数えるほどしかない。
慎重にキャスト。出ない。何度か流すがだめ。良いポイントなのにと思いピックアップしようとしたら出た。一瞬口に掛かったが外れてしまった。
アベレージゴギさん。ご健在で何よりです。
木立の奥にゴギの川が見えてきた。
体を起こし気味のケロロ先生(*^^*)
ここで僕はビートルからアントにフライを変えてみた。どちらも使って具合を確かめたい。
アントをキャスト、すぐにゴギが出た。おお、良さそうだ。次のポイントでも一投目で出た。ビートルよりも反応が良い気がする。
曇っていた空が晴れてきたようだ。木々に遮られて空はあまり見えないが、差し込む光が明るくなった。
アントとゴギの活性が合わさって一投一尾になってきた。 こうなると欲が出て、もう少しサイズが欲しくなってくる。