2023 釣乃記
第拾弍話  厳戒の町から山里へ
次々とすれ違う警察車両。
この週末、僕の住む町でG7サミットが行われる。
過去最大の厳戒態勢がしかれる中、僕は北部を目指していた。
なんとか通行止めや渋滞に引っ掛からず、目指す山里の川のエリアに到着した。

僕の会社もサミットの前後が休みになり、その初日に釣りに出かけてきた。
長らく雨による増水が続いていたが、ようやく落ち着いていそうなタイミングだった。
ドドドっと田おこしのトラクターの音が響く。平日はなんとものどかだ。大物ではないにしろ何匹か釣っているので焦ることもなく、次の場所をどうするか考えた。ちょっとやったことのない場所に入ってみようと思ったのも、平日釣行ならではのこと。
最初の場所より少し上流、集落の外れあたりから入ってみた。いきなり広いプールがあり、通せるかと思ったが案外浅かった。その先から大岩があったり深みがあったりで、変化のある流れになってきた。
そこはいかにも魚が潜んでいそうな極上のポイントばかりだった。慎重と丁寧を心掛けキャスト。いいところをいい感じでフライは流れたが、出ない。(あそこをあんなふうに流して出ないのは、魚がいない)。僕は先へ進んだ。

GWが終わってから二週間弱、例年GW明けから釣れなくなるのはGW中にめぼしい場所の魚は抜かれてしまうからだと思う。GW中の釣り人の多さは経験済みなので、どれだけの人がキープ派かはわからないが、みんなそれぞれに趣味の釣りをしているんだから、こればっかりはやむを得ない。
この場所も御多分に洩れず抜かれているっぽいかと思ったが、水際の砂地をみてそうではないかもと思った。
川へ向かう山里の道すがら。平日は静かだ〜(^^;)
前回よりも本腰を入れて日清焼きそば作りました(^^;)
朝のよりサイズはあるがちょっと喜べない。僕は一刻も早くこの区間から立ち去らねばと思った。
移動した先で昼飯を食べて休憩していると雨が降ってきた。僕は最後のヤマメは釣らなかったことにしようか、なんて考えていた。

厳戒態勢の町に戻り、家に帰ってマップを見ると、禁漁区間はもっとずっと上流からだった。
禁漁区間かもという可能性に気づきながら釣りをしたことの後ろめたさは少し消え、僕は後追いだがこの日のヤマメを素直に喜ぶことにした。
目的の川は第一支流で、のびのびとロッドが振れる。増水からの引き始めの水位なので、ずっと渇水が続いているよりは条件はいい。
何度かやった増水の本流に比べたら、ポイントが潰れていないしフライを流しやすい。
岸よりの流れで早速ヤマメがきた。20cmに満たないやつだが、元気がいい。
数匹釣って一旦車のところへ引き上げた。平日だからほかに釣り人は見えず、ゆとりを持ってできるが、この日は午後から天気が崩れる予報だった。
川床すやすやタイム。市内の物々しさとは無縁です。



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コンディションはいい。あともう少し大きくなりなさい(ー▽ー)
この川筋を歩くならきっとここをという砂地の場所に足跡がない。
増水したら消えるだろうが、割と水面から高い位置の砂地なので、人が歩いたら残っていてもよさそうな場所だ。ということは人が入っていない?
僕は現金にも急に期待が高まってきたが、同時に気づいた。
(あ、ここはひょっとしたら禁漁区間だったかも!?)
僕は一気に落ち着かなくなった。確かこの辺りに禁漁区間があると年券を買った時にもらったマップに書いてあったような。
川沿いのツツジ。釣り場に彩りが加わり。
大場所のヤマメはサイズに関わらずパワフルです。
藤の花は今が見頃。川もいいはずなのだが。  
いい渓相なのに足跡がないのもそれで説明がつく。どうしようかとしばし考えた。
少し進むと広いプールが目の前に現れた。流れの筋は素直な感じでドラグを気にしなくて良さそうだ。誰も見ていない。僕はここだけはやろうと、罪悪感に蓋をして慎重にキャストした。フライは一番いいところに落ちた。
魚体が見えフライが消えた。合わす。ズシっと手応え、ようやく掛かった。
広いプールだからよく走り回る。きれいなヤマメをネットですくった。