2024 釣乃記
第拾話  緑に沈むゴギの沢
いい感じの堰堤下プール。ど真ん中に投げ入れるが、漂うアントになんの変化も見られなかった。
僕はすぐに(抜かれてるのか)と想像した。
どれだけの釣り人がこの沢に入渓しているかわからないが、この場所は見逃すはずはあるまい。
僕は早々に見切りをつけて、上流へ進んだ。この先の釣り可能な流れはそんなに長くはない、小さな沢だ。滅多にない好ポイントで反応なしは痛い。
ここを外すと次の川の当てはないからここでなんとか釣りたい。
ここ三回の週末は本流にどっぷり浸かっていた。特にライズするポイントにこだわったが、結局ライズを取れたのは一匹のみ。現場で釣り仲間のKK君と三回のうち二回会った。彼は僕以上に早起きして来ていて、精力的に本流ポイントを攻め続けている。この週末もおそらく行っているのだろう。六月に鮎が解禁になるので、解禁前の最後の週末だし。
しかし僕は、いささか疲れてしまった。本流をやる川はやや遠方なので、家からの移動も時間がかかるし、ライズは時期的に期待できず、本流の瀬を釣り上がろうと思うとかなり大変だ。
KK君が頑張っているんなら、という気持ちもあるが、ちょっと近場で楽に釣りたいという気持ちが強くなってきていた。
こんな時、小渓流でゆっくりとゴギ釣りと言うのが思い浮かぶ。そして、一度それを思ったら頭から離れなくなった。
いきなり出た、ナイスコンディションゴギさん(*^^*)
あと2cmちょっとで尺上。たくさん食べて大きくなったらまた会いましょう(^^;)
車に戻った頃にはすっかり暑くなっていた。時間はまだ早いが、この日の釣りはもう満たされていたので、僕はウェーダーを脱いだ。
帰りの道すがら、車が停められて木陰の場所を見つけ、昼飯と昼寝を決め込んだ。

昼食を終え、椅子に深く腰掛けていると、鳥の囀りが聞こえ涼風が吹き抜けた。
本流でライズ待ちや瀬を歩くことに比べ、随分のんびりした釣りが後ろめたくもあるが、たまにはいいかと思い、僕は目を閉じた。
ずいぶん前に買ってからろくに使っていなかったScottのグラスロッドをひっぱり出し、ラインもWATERWORKSに巻き直し、準備をした。
行き先は高速のいつも降りるインターチェンジから割と近い。
GWにTさんとゴギ釣りに行った時に、朝早すぎて活性が低かったこともあるから、早く行きすぎないようにした。
そして沢に入ってすぐの良さげな堰堤下で出なかった。安近短なんて考えるから、釣り場選定でミスってしまったのか?
本流に行っている時にこれはできないんだよな〜(^^;)



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岩の間を縫う流れ。水が見えない〜(^^;)
小さめのプールが現れた。この沢でこういうポイントは貴重だ。
時間が経ち、流れの筋にも日光が差してきた。この日も暑くなる予報で、沢とは言え日なたは暑い。日差しが強いのがわかる。
小プール一投目、フライは真ん中手前に落ちた。するとそのさらに手前の岩陰から魚影が現れフライをくわえた。
(一投目で!) 小気味よく引くゴギをネットですくった。いいコンディションだ。
やはり最初の堰堤下の時はまだ時間が早かったのか?
もぐもぐタイムはチキンラーメン。煮すぎた〜(>▽<;)
すっかり緑濃くなった山間の沢。
フックのゲイプがちょっと開きました(◎_◎;)。  
小プール二投目、上の段からの落ち込みのすぐ横にフライを落とした。2秒そのまま、するとフライのあたりがグネッとうねった。
合わす、水しぶきが上がりロッドが曲がった。さっきのと全然違う強い引き、岩のえぐれの隙間に逃げ込もうとするのを無理やり引きずり出した。
ネットを差し出すとゴギがネットを嫌いまた逃げようとするのを強引にすくう。フライを外すとフックのゲイプが少し伸びていた。
僕はホッとしてさらに上流を見上げた。急に標高を上げる沢は緑の中に溶け込むように消えていた。