其ノ二百九十六  夜を行くもの
尾道灯りまつり。町中にぼんぼりが並ぶ。
ひと月ほど前に山里の祭りで松明行列を見た。
あまり期待せずに行ったので、見たらすごくて非常に印象深かった。
こりゃあもっと行ってみなきゃあ、と奮起して今まで敬遠していたメジャーなお祭りにも出向いて見ることにした。まずは尾道の祭りから。
町の渋滞や駐車場満車を予測して電車で行く事にした。これも僕にとっては快挙だ。何年ぶりに乗るのやら。切符は買えるのか? 乗り換えは大丈夫か?
大袈裟にハードルは上がり、僕は東へ向かう列車に乗った。

明るいうちに尾道に着きどのあたりをまわるか作戦を練って、しかし時間はつぶれず僕は町の散策を始めた。
あちこちにカメラと三脚を持った人たちが見える。祭りの写真を撮りにきた人たちだ。
駅からも続々と人が出てくる。いつもなら帰ろうかという時間にどんどん集まってきている感じだ。
日が暮れないと始まらないこの祭りの、臨戦態勢のうちからその様子が見れるのは面白い。
夜と言えば夜釣りにも行ったなあ。釣れなかったけど。
その後、少しだけその気になってきたというか、まあその気になってきたことになるか。
まずはエギでアオリイカを狙う事にした。こればっかりはひとりで行く気はないので、仲間にあれこれ聞いて道具を揃えた。
アオリの季節もあと少しなのでなんとか釣ってみたいのだが。
スピニングリールなんて手にするのは電車に乗るよりも久しぶりのことだった。
日が暮れ始めると早い。
あちこちの通りで少しづつぼんぼりに灯がともり始めた。
これが町中に並べられている。僕は少し山の手の神社で暗くなるのを待っていた。
暗くなるにつれ、ぼんぼりの灯はゆっくりと際立っていく。松明行列の燃え盛る炎とはまた違った灯の雰囲気が心地よかった。
松明の時も思ったが、灯はその場にいる人たちを共感させる効果があるようだ。
灯りが醸し出すゆっくりとした時間と空間。
そして夜専用のタックルをσ(^_^;)
もちろんソルトウォーターのフライをあきらめた訳ではない。ただいろいろやてみるのはいいと思うので、やってみる事にした。
アオリのシーズンが過ぎてもほかのイカも釣れようし、エギ以外の釣りにもこの道具は使って差し支えないし。
しかしイカ以外を狙うならやっぱりフライでやりたい気持ちが強いので、じゃあ今回揃えたタックルのハイシーズンはアオリの釣れるまさに今ということになる。
もうこの時期だと日中は釣れないので、夜の釣行に限定されたタックルでもある。来年だってその次だってあるのだが、道具に投資した分の満足度だけは今年中に勝ち取らねばならないなあ。
竹の筒から夜空に放たれた灯りは、よその星から見えているのだろうか?
次回釣行はいつにするか? というのもあるが、次の祭りも待ってはくれない。
尾道の次は竹原だった。憧憬の路と名付けられた祭りへ行ってみた。今回も電車で。
尾道の紙のぼんぼりとはまた趣の違う竹の灯籠。
内側の色がやさしい照明効果を生んでいるようだ。
祭りのメインの通りは人で溢れ返っていた。それは尾道でもそうだったし、大潮の夜の港もそうだった。
にぎやかな夜はまだ続きそうだ。