其ノ三百二十九  雁木、水辺Jazzの夜
水辺にて。ひと時のJazzyな夜が始まる。
広島は川の多い町だ。
僕の行きつけの釣り具屋もふたつの川の別れる地点の近くにある。川が町の生活に密着しているのがこの町の特徴とも言える。

その町で水辺のJazzイベントが行われる。何年前からあったのか、僕は知らず今まで行ったこともなかった。
今年は釣り具屋がフィッシュ&チップスの出店を出すというので、様子を見に出掛けた。
揚げたてをお客様にお渡しするために注文を受けてから揚げる。
そのためどうしても待っていただく。しかしおいしいとの反応が返ってくると、売る側としてはやっぱりうれしい。一度買われた方がおいしいからともう一度買いに来てくれたりもした。
釣り具屋の常連のメンバーも次々と現れ、なんだかステージ近辺の店の中で一番活気がありそうだ。
僕は前面には出ず後で入れ物を準備したり足りなくなった材料を買いに行ったりしていた。
繁盛しております。結果、80食完売。
心地よいJazzの調べが流れる中、川沿いの土手の歩道を歩くと釣り具屋の店が見えた。Jazzのステージのすぐ横、一等地ではないか。
お客さんはすでに数人、フィッシュ&チップスのでき上がるのを待っている。お店は釣り具屋スタッフと協力者一名の総勢二名。こりゃちょっと手がいるか? 僕は協力を申し出た。もちろん手助けどころか邪魔にならないように(-_^;)
17:00スタートで、僕が着いたのが18:00。イベント終了まであと二時間半くらいある。客足もこれから徐々に増えてきそうだった。ぱらぱらと弱い雨が降り始めた。
時折雨足が強まったがなんとか持ちそうだ。忙しさでJazzの方は耳をそばだてることしかできない。
それでも気持ちのいいノリが音だけでも伝わってくる。そう広くない会場に集まった人たちがステージの演奏に合わせてリズムを刻んでいる。町の明かり、川を行く遊覧船、出店の照明や川筋のキャンドル。行き交う人々や立ち止まる人。なんだかこういう夜にはJazzがよく似合う。
渓流はオフシーズンだがそろそろ海が良くなっているはず。僕はなかなか海へは行けずフライも巻けていない。
この夜の音色は店を手伝って忙しかったはずなのに、仕事や週末の忙しさをなんだか癒してくれた気がする。
イベント終了の時刻はとっくに過ぎたが、会場のにぎわいはまだ冷めそうになかった。