其ノ三百二十五  離島スクランブル
穏やかな瀬戸内の海。お昼寝したくなるな〜。
本土に面したフェリーの港の反対側、南側の周回道路沿いの集落で祭りばやしが聞こえた。
子供神輿かなにかか、はっぴを着た子供たちと付き添いの大人たちが見える。市内でもそうだったがこの日はあちこちで祭りをやっているようだ。人口1,000人ちょっとの島だが、橋のかからない離島ということもあって、今まで訪れる機会はなかった。いつもの橋で渡る島とはやはりなにか違う。船でしか帰れないという不自由さがそう感じさせるような気がした。

何ヶ所目かのポイントでボラのジャンプを見た。Hさんは一瞬青物のナブラかと思い色めき立ったが違っていた。残念。
その後誘いワインドにチヌらしき魚影が追ってきた時、僕のキャストしたフライがいいところに落ちてもしやと思ったが、その魚影は反応しなかった。また残念。
夜が明ける。向かう島でなにが待っているのか?
釣り具屋でよく会う釣友との釣行の日がやてきた。
結局チューブフライは四本しか巻けなかった。
約束の朝、冷え込んだ空気に気持ちが折れそうになりつつ、僕とHさんはフェリーに乗り込んだ。
目指す島は僕たちの住む市街地の目の前、二十分の船旅はすぐに終わった。
フェリーから降りた僕たちはこの日の足、自転車にまたがり最初のポイントへと向かった。
今回の釣法プランはHさんがワインドでイカを手前に寄せ、それを僕がフライで釣る、というやり方だ。
果たしてそんなにうまくいくのか?
全く未知数の釣法だが、Hさんからこのやり方の話を聞いた時、僕は面白いと思った。
最初の港、早速打ち合わせ通りのやり方でトライ。しかしワインドについてくる魚影は見る事が出来なかった。
すぐに場所変え。この日は自転車で島をランガンで行くというのもプランのひとつだ。
ガイドと釣りをする、という経験はないが、近いものはある。
友達の知っている川へ行った時などポイントを周知している友達がここだあそこだと教えてくれる。
そうすると期待に応えなければ、という心理が働く。
今回もそうだ。Hさんが寄せて僕が釣る。せめて一匹、この釣法が成り立つのだと証明したい。
何ヶ所か移動し、まだ作戦は発動しきっていなかった。Hさんはそれでもでっかいエソを何匹も釣っていた。ベイトが入っている証拠、とHさんは言った。
また移動。島の周回道路は平坦だから楽〜。
結局島を一周した。フェリー乗り場に近い最初に攻めた港でこの日最後のチャレンジすることにした。
しばらくはやはり反応はなかった。不意にHさんが叫んだ。見るとベイトの群れが泳いでいる。テレビで見たことのあるイワシトルネードみたいな小さな稚魚の群れだ。
これを食べになにかがやってきているかもしれない。
Hさんと僕はそれぞれの釣法で残り時間をやってみることにした。
地合いが来たのか? 間違いなく海面がざわついてきていた。
Hさん、またしてもエソで、苦笑い〜σ(^_^;)
果たして最後のチャンスは巡ってくるのか?
Hさんのタックルのキャスティングでも届きそうもない場所で魚が跳ねた。青物のようだった。
僕はと言えばだんだん釣りなのかキャス練なのかわかならいような感じになっていた。
「来たッ!!」 Hさんが叫んだ。ぐいとロッドが曲がる。これはエソなんかではない。
ファイトするHさんは途中で落ち着いた声で言った。「セイゴじゃ」

夕まづめを攻めるHさんを残し、僕だけ島をあとにした。
きっと、次こそは・・・。