其ノ四百七十二  台風とラジオとチャートリュース
あれほど暑い日々が続いていたのに、いきなり涼しくなった。この日が特別そうなのは週間天気でわかっていた。翌週はまた少し気温は上がり気味になる。
接近する台風の影響か、日差しがないのはもちろんだが、風があるのが余計に涼しく感じさせる。

五月中旬以来の島釣行。今年は良く渓流に行ったからメバルベストの六月に島へ行っていない。
一年ぶりくらい? のカマス様。例の色、がっぷりいってます。
週末はずっと雨予報だったので、出掛ける準備はしていなかった。ところが土曜日になると雨は夜まで降らない予報に変わっていた。台風の最接近は日曜日の夜だ。風はありそうだが、それは台風影響に関わらず吹く時は吹く。
小潮、満潮14時。急いでフライを数本巻き、車を発進させたのが12時。満潮前にはぎりぎり着ける。そんなこんなで四ヶ月振りの島釣行へ向かった。

今回は近めの島を選んだ。出遅れたからいい場所は取られているかもと思ったが、やりたい場所は空いていた。ほぼ満潮になっていた。定番のゴールドのシラスファイバーのフライをキャスト。反応はない。ふと、フライボックスにひとつだけチャートリュースのフライがあったので、ひらめきでそれを結んでみた。ゆっくり引くとコツコツっと反応があった。
ククッとロッドが引き込まれる。ラインを手繰ると細い魚、カマスだ。
立て続けに数匹釣ってアタリが止まった。群れが去ったか?
潮は下がり始めている。残り時間は少ない。僕は場所を変える事にした。
過去にいいカマスを釣ったが、それ以外では相性がいいと言えない港だった。
風が強かった。釣り人は数人、空いた場所でやっていると横の人が鯖を釣った。
小潮の穏やかな海。風も弱く波は立たない。
「サバ、要る?」
「あ、大丈夫です」
隣の人の申し出を丁重にお断りし、風の止み間を狙ってキャスト。見事なまでに反応がない。
沖側のサバの人、反対側に夫婦連れの釣り師。さっきから入れ食いになってきている。
カゴにエサを詰め、その下にサビキ。その釣法だと周辺の魚は全てそちらに行ってしまう。今回もこの港は分がなさそうだ。
にゃーっと海猫様。釣り人が少ないとおこぼれも減りますね(^^;)
一時間近くやって全くアタリがない。カマスの港はそれなりにあったのに、いくら播き餌をする釣り師が近くに居るとは言え、そんなに違うものなのか?
日が傾いてきた。潮流の時間も残り少ない。僕はもう一度最初の港へ向かった。夕まずめならひょっとしてと思ったからだ。戻った港は誰もいない。僕は幸運に感謝しいつもの場所でキャスト。一投で小さいアジが釣れた。
うん、やっぱり場所でフライフィッシングとの相性というのはあるのかも知れない。そのあとキャストするが反応は途切れた。徐々にあたりが暗くなってきた。九月下旬、日没は急速に早くなってきている。
すっかり暗くなった。少し雨も降り出し、台風の影響らしき風も吹き始めた。
さっきの小アジでよしとするか、と思った時、リトリーブする手が止まった。
(引っ掛かった?)と思ったが、動いた。明らかに生きた魚の気配。
そして重く鈍く引く主が水面に現れた。アジだ。
最初にカマスを釣ったチャートリュースのフライをがっちりくわえていた。
ヘビー級のアジ様は過去最重量だったのかも。
翌日、台風接近で大人しく家にいた。日曜日の午後は好きなラジオ番組があって楽しみにしていたが、この日そのパーソナリティの人が番組卒業で最後の放送だった。
そのことをSNSに投稿すると、同じ番組を好きで聞いていた、同じフライをする人からコメントがきた。
卒業を惜しむ気持ちも同じで、僕は番組を聞きながらそれでも前日のアジの手応えも思い出していた。
こんな感じで聴きました。中国地方ローカル RCCショコラジはまだ続きます(^^;)