F.F.雑感
其ノ五百六十三  ヤズとチヌと包丁
「今日は平日で〜」と声をかけられた。よく話をする釣り好きのご近所さんだ。
「用事で半日休みにしたんです」と言うと、「ヤズ、食べる?」と言われた。「ヤズ??」

冷蔵庫に対角線でギリギリ入るサイズ。すごいものをもらってしまった。もちろん過去にさばいた経験はない。
その日の夜、僕は検索して見つけたネットの動画を再生、停止を繰り返しながら、ヤズの処理にチャレンジした。
エラから内臓にかけてを本体から切り離し、一緒にごっそり取り出す、と、動画では鮮やかにやっているがそうはいかない。エラと骨のつながっている所は出刃包丁でないと無理っぽい。普通の文化包丁しかないし安全を考えてキッチンシザースでなんとか切り取った。エラと内臓を取り出ししっかり洗って、いよいよ三枚におろす。ここは包丁の切れ味が物を言う。
尾鰭側から包丁を入れズコズコと切っていくと思ったよりすんなりできた。ちょっと骨側に身が多く残ったが、初めてにしてはこんなものか。そして皮を引く。これもうまくできて、なんとかさくが二つ。おお、ご近所さん、できましたよ。
その日は刺身で、あとは冷凍した。翌日は照り焼きにして残りを漬けにして仕込み。最終日は漬け丼にした。どうなることかと思ったが、なんとかなった。こんな感じでできるなら良い包丁も欲しくなるが、魚をさばく機会はそんなしょっちゅうはないか。
これをさばけと言うのかーっ!! あ、僕が釣ったのではなく〜(>▽<;)。
テイリングやもじりの見えるモヤモヤゾーンでヒット。
そう言えば前回釣ったチヌは川の水質もよく魚体も綺麗で、きっと食べてもおいしいんだろうなぁ。

その水質のいい川の河口にまた行ってみた。
大潮二日目で干潮27cm。最近はガッと下がってガッと上がる大潮よりも、あまり下がりきらず上がりきらない潮の方が良いのではないかと思い始めている。
でもこの日は大潮だから、短時間勝負になる。そして、予報では35度を超える猛暑日になるとのことだった。
その人から距離をとり、キャスティングしつつチラチラ見た。
潮が満ち上がり始めて、その人が1匹目を掛けた。僕もやらねば。少し経ってその人が2匹目。そして3匹目。なんだ〜? 僕は気にしてもしょうがないのにだんだん焦ってきた。
その人が4匹目を掛けた時、僕は居ても立っても居られなくなり、少しづつその人のいる方へにじり寄って行った。
近づきすぎるのは悪いので、ギリギリ寄れる距離まで行くと、その人の方が僕から離れていった。
刺身はひどい切り方で(^^;)。刺身包丁がいるな〜。
まさかチヌが鵜に食べられやしないだろうが、警戒心が強まるのでは?
漬け丼は良い感じでできました。
潮が下がっている時間帯。前回の釣りでテイリングが見られた場所に行くと、どうも様子が違う。チヌの魚影はなく下流への流れも弱いような。微妙に潮の下がり方が違い、それによってチヌの行動も変わってくるようだ。自然相手だからそういうことも十分考えられる。
別の場所で下げ潮居残り組を見つけたので、かなり粘って攻めてみたが、相手にされなかった。だいぶ潮が下がってきたので僕は満ち上がりで入ってくるチヌの通り道の入り口へ向かった。
「!」 距離があって気付かなかったが、人がいる。まさに僕がチヌを迎え撃とうと思っていた場所。間違いない、釣り人だ。
(ポイントを譲ってくれた?)
近づきすぎただろうか? ちょっと申し訳ない気がしたが、とにかく釣らねば。空いた場所に立ちキャストした。
あとでわかったが、その人はチヌのフライフィッシングではかなり有名な人だった。帰り際に話しかけ、色々と教えていただいた。

譲ってもらった(かもしれない)ポイントでヒット! 寄せたチヌは銀ピカの綺麗な魚体だった。
きっと食べてもウマいに違いない。もし食べるなら次釣るまでに良い包丁を買っておかなければ。
この日の最高気温は37.1度! でも河口は干潟の熱吸収でだいぶ低いはず。