F.F.雑感
其ノ五百六十七  バラしの呪縛と次のフライ
車の窓から見るとはなしに河口をみると、(!?) テイリングしている! 
僕は大いにあわてた。そんな状況なぞ想像もしていなかった。
車を停め、大急ぎで支度をし、川へ降りた。
干潮近いはずだが、小潮なのでそんなには潮は引いていない。大潮の半分くらいか。それでもあらわになった砂浜で潮干狩りしている人たちがいる。
対岸にはルアーの人が一人。声をかけてこちら側に入ったが、ルアーならその気になればこちら側に届く。
リトリーブする手が止められた。ロッドをためる。動かない。後ろに引くとググッと魚の気配。掛かった! 追跡テイリングのチヌだ。水面でもがき、ほかのチヌたちが散っていく。なるべく場荒れさせないように後ろに下がりながらリールを巻いた。
魚体が見えた。なかなか良いサイズだ。着いてまだ30分くらい。僕はホッと胸を撫で下ろした。

別の場所でテイリングしている。ここはたたみかけるぞ、と僕はチヌの位置を見定めてまたキャストした。すると標的のテイリングより手前にチヌが固まっていて、また全部散らしてしまった。
少し経つと釣った場所あたりでテイリング。なんか今日はすごいな。僕はテイリングの1m横にキャスト。散らなかった。そのままリトリーブするとググッときた。よしっとロッドを立てるとプッと外れた。あー、バレた。
ところがバラしはそれだけにとどまらなかった。次のキャストでも掛かり、今度はティペットが切れた。いかんいかん、落ち着こう。糸を直しテイリングにキャスト。ホント、よくテイリングしている。また掛かった。引きが強い。っと、プッと引きが消えた。またバレた。どうなってるんだ?
小潮のフラット。少し曇りや雨が続いたあと、また夏が戻ってきた(^^;)
さらに改良したカニフライ。毎回工夫を重ねてます。
テイリングは続いていた。その横1mくらいにキャスト。着水はうまくいった。
リトリーブするが反応はない。もう一度キャスト。すると着水する前にあたりのチヌが一気に散ってしまった。空中のラインで驚かせてしまったようだ。
河口の別の筋でもテイリングしている。この日はかなり活性が高い。こんなにテイリングしているのは初めて見た。
次のキャスト、着水後リトリーブするとなんとテイリングしながら追ってくる奴がいた。
秋の気配を感じた渓流と違って日中はまだまだ夏のフラット。
それを見せた釣り仲間のTさんが言ったのだが、大きめのフックに少ないマテリアル量で巻く、ローウォータースタイルだと。
フックサイズは変えずに小さく巻く。逆にゲイプ部の露出はマテリアル量に対しては大きくなるが、それで食いが落ちるかどうか。バレにくさは上がるはずだ。

そのフライを携えて僕はまたフラットへ向かった。この日は中秋の名月で、干満差の大きな大潮だった。下げ潮では釣れず、満ち上がりを迎えた。
イダも釣れました〜(>▽<;)。
引っ張るフライをテイリングしながら追ってきたチヌさん。
改良を重ねて、徐々に自分のフライになっていく。 
最終的にこの日は1キャッチ、2合わせ切れ、5バラしだった。
よもやよもやの5バラしとは。僕は途中からすっかり疑心暗鬼になってしまい、バイトしてもバレることが頭から離れなかった。
過去に見たことがないくらいの数のテイリングは、バイトの荒さを意味していたのかも知れない。

バラしまくった日からの1週間の間に、フライを工夫して巻いてみた。ちょっと前にフライの巻き方を変えたものをさらに改良した。
釣り仲間たちと遡上するチヌを迎え撃つ。
上がってきたチヌを見つけ、Tさんに言うとすぐに釣った。キビレだった。僕もかけるがバレた。脳裏に嫌なイメージがよぎる。
すぐ後にまた掛かったが、今度は糸が切れた。落ち着け、自分。
ここで僕はようやく改良型フライを結んだ。大潮だから最初の群れがチャンスだ。
三度目のバイト、今度はバレない。引きが強く、まさかボラ? と思ったが、水面でうねる魚体を見て、僕は改良フライに少し自信が持てた。
ナイスファイトのグラマラスチヌさんでした(^^;)