F.F.雑感
其ノ五百六十九  台風一過の困難
海水温の高いコースを勢力を発達させながら接近する台風14号。何年か前の日本各地の河川が次々と氾濫した台風を思い出し、しかも僕の住む地域を直撃に近いコースとなると尚更落ち着かない。
日曜日の夜から雨風ともに強くなり、翌月曜日は出社停止だとスマホのアプリに通知がきた。
月曜日は在宅勤務をして被害が出ないことを祈りながら台風の通過を耐えた。
スマホの通知も在宅勤務も数年前には考えられない環境で、でも台風の大型化に備えるにはまだ心もとないとも思った。
どの河口フラットに行くか迷ったが、割と小さめの川の河口にした。川が小さければ濁りが取れるのも早いのではないかと考えたが、それは安直な考えだった。
干潮前の下げ潮の途中の頃に到着。川筋は濁りはなかった。これならイケるぞ、と思い、準備をして川に降りた。まだ河口付近の潮位が高いから様子を見ていたが、釣り仲間のTさんからこの河口の横に広がる干潟エリアが面白いと聞いていたことを思い出した。
過去に何度かそこでもやってみたことはあるが、釣るまでには至っていない。河口エリアがいい潮位になるまで時間がある。ちょっと干潟エリアをやってみようと思った。

それから1時間ちょっと経ち、河口エリアはだいぶ潮が引いてきていたが、同時に流れの筋がかなり濁った水が流れていた。着いた時はこんなに濁っていなかったのに。近くにアサリの養殖場があり、台風で流れ込んだ土砂を持ち主の人たちが掻き出している。最初はそのせいかと思ったが、そんなレベルの濁りではないと気がついた。
どうやら濁りの元になる細かな粒子が沈殿していて、流れが穏やかな時は水は澄んでいても、下げ潮で早くなったり風で波だったりすると、攪拌されて一気に濁り出すカラクリのようだ。
台風通過後の夜。晴れ間が見えてきた。
その日の終わり。すっかり秋の空。
そして台風通過。被害は出ているが僕の住む地域はなんとか無事だった。コースのちょっとの違いで明暗が分かれる。次はどうなるかわからない。備えは必要だ。

その週末、大潮だしフラットに行きたいのは山々だったが、大抵の河川は濁りで釣りにならないと思っていた。
この週末は金曜日が祭日で、僕は仕事だったが釣り仲間は釣りに行っており、そしてちゃんと釣果を上げていた。
そうか、それなら行くか。
台風の影響を甘くみてました。そのおかげで新たな発見も。
すぐに黒っぽい魚影を見つけた。幸先いいぞとそっと近づくが気配を察知されてしまった。 もっと慎重に動かないといけないのか。
ゆっくり歩きながら魚影を探すとなんとテイリングを見つけた。僕ははやる気持ちを抑え、ゆっくり近づこうとしたが、水中の杭につまづきよろけてバシャバシャと水しぶきを上げてしまい、当然テイリングの主は散ってしまった。

Tさんに聞いていたこのエリアの面白さはサイトフィッシングをやる上でのテクニカルな要素がふんだんにあることだった。
砂地でうごめく巻き貝。チヌさんが狙ってます。
台風後のフラット。彼方先に自分の町が見えるお気に入りの場所。
濁りがない時はチヌは見えていたのだけれど。 
手がつけられないほどの濁り。干潮から満ち上がりになってもそれは収まらず、僕はかろうじて濁りの少ない筋にフライをキャストした。数匹のチヌの魚影は見え、アタリもあったのだがフッキングせず、河口エリアは惨敗に終わった。

帰り支度をする数時間前、河口エリアの前に向かった干潟エリア。平らな場所が広がっていて、潮位が高い時はいい感じに水に没している。そして川から離れているから濁りの心配はなかった。
平らで遠浅、それはチヌを見つけやすくこちらも見つかりやすい。岸近くの護岸沿いにいるやつはそのキワを狙わなくてはならない。
そして、浅場に数匹のチヌを見つけた。割と近い。そのままキャスト、少し離れた横に落とす。散らなかった。
ゆっくりリトリーブすると、魚影がつられるように動いた。引く、動く、引く、動く、・・食った!
最初釣られたことに気づいていないようだったが、猛然と走り出した。
濁りのない澄んだ水面に水しぶきが上がった。
やはりチヌさんも濁った水は苦手ですよね(^^;)