F.F.雑感
其ノ五百七十一  十三夜のフラット
懸案事項のカメラ復活はまだ進展なし。
そしてもう一つ、今年のチヌ釣りを釣って終わりにするという件。なんとなくこの週末をそれにしたいと考えていた。
でも釣らないと終わりにできない、なんて考えないようにしている。なんでそんなプレッシャーを自分にかけにゃならんのじゃ。

その週末、十三夜の月の出る日の中潮で、干潮は14寺半。
僕は10時には家を出てフラットに向かった。
夏の盛期の時はうまく鼻先を通過させたら、チヌがフライを追って動くのが見えて興奮ものだった。しかしそれは全く見られない。スルーするか、フライやティペットを嫌って移動してしまうかだ。
何度か興味を示したかに見えたが、チラ見する(ように見えた)程度だった。このまま粘ってもダメか? 河口へ移動しようか迷ったが、日が差し魚影が見えるとどうしても気になる。
決断が煮え切らず反応がなくても投げていると、下流側に釣り人の姿が見えた。この時期になってもウェーディングで釣りに入る人がいるんだ、と思っていると、その姿からTさんだと気づいた。さらに河口のブレイクラインにはもう一人釣り人がいた。

上流側ではフローディングラインを使っていた。以前Tさんにテイリングを譲ってもらった時にシンクティップで散らしまくったこともあり、サイトで静かに狙うには着水のインパクトが少しでも弱そうなフローティングラインを使っている。
Tさんと合流し河口へ向かった。今年はTさんと何度も一緒にチヌを狙った。ファイトの動画を撮ってもらったこともあるし、隣で釣っていてお祭りしたこともあった。そんな近くでやっていても二人ともチヌをキャッチできた。
もうすぐ干潮潮止まりだ。中潮の割に潮は沖まで引いていた。
Kさん、困難な状況でもしっかり釣られてます。
この日のチヌさん。最後を締めくくるには上出来過ぎ。
昼前に到着したが、河口より上流側はすでに十分立ち込めるまでの水位になっていた。
この日の気温は24度までしか上がらない予報。水温も低いのは容易に想像がつく。
僕は迷わずウェーダーをはいてフラットに降りた。
風はまあまああり、水面は波立っている。日差しは出たリ曇ったりで、日が出ると流れの筋にチヌの魚影が見える。数は結構いる。
僕は以前サイトで釣った時のように、チヌの鼻先をスィングさせるようにフライを投げた。
渓流では水が漏るウェーダーも汽水域では漏らないのです。
僕はTさんの横に立ち波間に目を凝らした。確かに魚影が見える。
しかし僕とTさんのフライには食いつかない。やはり盛期と違う。
Kさんはブレイクで攻めている。
「波が高いからシンクティップ、いいかも」とTさんが言った。
そう、僕はTさんと合流する前にフローティングからシンクティップに変えていた。掛からないこう着状態をなんとか打破しようと思ったからだった。
Tさんは移動し、僕も場所を変えた。盛期の満ち上がり時に群れで押し寄せたチヌの勢いはない。
ロッドとネットをしっかり洗って。
今シーズン後半からはこのローウォーターカニフライで通した。
リールとラインも。ご苦労様。 
ブレイクラインの釣り人はKさんだった。僕がチヌを始めた年に少し教えてもらって以来、随分長く顔を見ていなかった。
潮止まりの間、3人でフラットに立ち情報交換タイム。これもこの釣りをする者ならではの光景だ。
そして3人それぞれの場所で上がってくるチヌを待つことにした。

風は吹いたり止んだり、日差しも出たり曇ったり。ブレイクからの満ち上がりは波が高かった。
Tさんが声を出し手招きした。チヌが入ってきてるのか!?
ふと前を見るとこちらに向かってくるチヌが見えた。慌ててキャストしたがかなり手前に落ちた。そのフライにチヌはスッと近づき、ロッドがぐんっと引き込まれた。
シンクティップで沈みが早く、それで間に合ったのか? 僕はロッドを支えながらTさんにチヌが入ってきていると叫んだ。

日が傾いてきた。Tさんが声をかけて対岸を指差した。僕と反対側の岸に車を停めているようだ。
僕はTさんに手を振った。そして河口の先に十三夜の月が登ってきているのに気がついた。
釣り終わりの夕暮れ。右下に十三夜の月が〜(^^;)