F.F.雑感
其ノ六百四  島のチヌと九月のキノコ
奥まった湾はいくつかの小島に囲まれていた。
途中の道は狭く民家が点在している。橋で渡れるとはいえ、瀬戸内海の島のフラットという特殊な釣り場へ来た感がある。

先週の大潮から打って変わって潮位差の少ない小潮のこの日、僕は釣り仲間と島へチヌ狙いでやってきた。
広大な砂地の湾のフラット。Tさんの開拓した釣り場だ。僕はここには初めて来た。
それからほどなくしてKK君がやってきた。残念ながら最初のチヌたちの時合いは過ぎていた。だがこれからに期待ができる。
ゆっくり潮は上がってきた。でもなかなか魚影が見えてこない。時折出会い頭で向こうからこちらに近づくチヌに出くわすが、そういうやつはすぐに逃げてしまう。それ以外はチヌの姿を見つけることはできずに時間が過ぎていった。
結局最初の僕とTさんが釣ったチヌのあとはみんな釣れなかった。島のフラットは秋の気配を感じさせる風が吹いていた。

その日の夜にTさんとTSさんが翌日にキノコの様子を見に行くという。僕も迷わず参加させてもらうことにした。去年から始めたキノコ採り、去年はクリタケやナメコをかなり採らせてもらった。
今年は去年の参加よりひと月早い。去年僕はお目にかかれなかった香茸が出ている可能性はある。Tさんたちはこの時期に生えるハナイグチが狙いだが、最近行ったTSさんによるといろんなキノコが出ているらしい。
最初の山に着き、3人で三方向に別れて探し始めた。そしてものの数分でTSさんが声を上げた。
Tさん、KKくんと島へ渡ってのチヌ狙い。
とは言っても、いっぺんに食べられないから、保存方法を検索します(*^^*)
長潮で潮位差があまりないこの日、満ち上げから満潮までをやってみようと、Tさんからのお誘いだった。
Tさんと乗り合わせて来て、早速ブレイクまで行ってみた。まだチヌの姿は見えない。
牡蠣棚がある周りにTさんがチヌを見つけたので、そのあたりを二人でやってみるが、チヌはフライに興味を示さない。
僕はフラットの真ん中あたりに行ってみた。まだ潮は上がってきておらず、海岸から100mくらい先は砂浜が露出している。
平坦な道は平気でも斜面では汗びっしょり(^^;)
「舞茸だっ!!」 僕とTさんはすぐそちらに向かう。すると木の根元に人間の頭大の舞茸の株があるではないか。入山してまだ五分くらいじゃないのか。僕たちは一気にテンションが上がった。
さらに山に入り込むがこれといったキノコは見つからない。
汗をかきながら進む。山といっても日中は暑い。前日の島のフラットの方が涼しいくらいだ。
僕は急斜面をゆっくり移動しながら探した。すると傘にイボイボのあるキノコを見つけた。
その時、斜面の上の方でTさんの声がした。
Tさん、二連続キャッチ。
Tさんが見ている前でヒットしたチヌさん。グッドサイズ。
砂浜にいるチヌの餌生物を観察するKKくん。 
砂浜側にようやく潮が入り込んでいる場所、何かいる。チヌだっ! 今まさに最初の群れが入ろうとしている時だった。
キャストしたが風で離れた場所に落ちた。もう一度キャストするとTさんがやってきて言った。
「入ってきてますか?」
「入ってきてる、きてる!」
そう答えた時、グイーッとロッドが引き込まれた。チヌが食いついた。
Tさんが見ている前で、僕はチヌをキャッチすることができた。そして僕が写真を撮っている間にTさんもすぐに釣った。
Tさんのところに行くと興奮した様子のTさんが「香茸!」と言った。これが・・・香茸!
そのキノコを見て、傘のイボイボに僕はさっき見たのも香茸だと気がついた。
すぐに戻ったが、見つからない。踏まないようにゆっくりじっくり探すと、あった。初めて自分で香茸を見つけることができた。

まさかの舞茸と香茸の収穫。僕は帰ってからの下処理やどうやって食べるかを考えるのに忙しくなりそうだと思ったが、空腹がそんな苦労は跳ねのけてくれた。
風が吹き荒れ、雲が流れて、季節の引き継ぎをしているような(>▽<;)