F.F.雑感
其ノ六百七  白波と秋風のフラット
いきなりラインが目の前の流れの筋に吸い込まれるかのように引っ張られた。
実際フライは吸い込まれたのだ。そして勢いよく走り始めた。釣り開始から20分くらいだろうか、僕はこの日の釣りがかなりむつかしいものになるだろうと散々心配したことをすっかり忘れて、ラインを巻き取った。
釣り開始後の一匹目としては最速なのではないか。でもこうなるとすぐに次の欲が出る。
何匹釣れるか? せめてあと一匹、いや二匹は釣りたい。
前回のチヌ釣りは瀬戸内の島のフラットだった。Tさんが開拓したポイント。最初の時合いで一匹釣ることができた。型も良かったので、これが今年のラストチヌかなとうっすら思っていた。実際、その翌日から今年のキノコ採りに参戦を開始したし。
でも実はその後も僕はチヌ釣りに行った。二回目のキノコ採りの翌日、これこそ今年最後のチヌだと決めて。
前日土曜日のTさんとのキノコ採りの際にその話をしていたが、Tさんは日曜日の天気が曇りなのと風が強いことから行くのを思いとどまっていた。
それに対し僕は天気に構わずフラットへ向かった。そして曇りと風で魚影の見えない状況に振り回され、夕方前の干潮後の満ち上がりまで粘ったが、最後に暗くなってから30cmくらいのチヌを釣って終わった。

モゾモゾはチヌがフライを吸い込んだ反応だった。チヌは何が起こったかわからなくなっている。真っ直ぐ引っ張るとすっぽ抜けるので、ゆっくり角度をつけるようにロッドを水平にしてラインを張る。するとチヌは異変に気づき走り出す。ここでロッドを溜めてフッキング。掛かった。
釣り始めて下げ潮のうちに二匹。もちろん早めに釣れればいいと思っていたが、本当に前半で釣れるとは思わなかった。
ブレイク付近は常時この波(^^;)
これまた吸い込み系アタリのチヌさん。合わせまでがドキドキ(^^;)
二匹釣ったがそれは着いてすぐだったから、やっぱり三匹目を釣りたいという欲を引きずっていた。
いつもはやらない岸際の流れのないところへ行くと、チヌが固まっているではないか。
キャスト、ゆっくりリトリーブ。すぐにモゾモゾ、きた。しかしロッドを倒すのとチヌが反転するのが同時でティペットが切れた。
糸を直しキャスト。数回でまたモゾモゾ、合わせたいのを我慢してからロッドを引いた。掛かった。
秋の気配をはらんだ風が吹き、白波の間にチヌの魚体が光った。
今年もご苦労様でしたのカニフライ。
この日の釣りを決行する気持ちが固まるまでは、前回の暗くなってからの30cmで今期を終わりにするかどうか迷っていた。
釣って終わりにしたいというのはチヌを始めてから毎年思っていることで、最初の二年は満足の釣りで終われなかった。おととしと去年は釣って終われている。

下げ潮で畳みかけるぞと、さらにチヌを探す。良さそうなのが底をついばんでいるのが見えた。
左側にキャストしゆっくり鼻先をスィングさせるとチヌが動いた。
チヌ専用に買ったフライボックス。また来年。
珍しく日中に干潮。明るいうちに終われました(^^;)。
フラットのユニフォームも洗濯して、しばしの休息。 
ここ数日、風の強い日が続いていた。この日も3mの予報だったが、フラットのやや上流側は釣りがむつかしいほどの風ではなく、日差しがある分チヌが見えてやりやすかった。
この日は若潮明けの中潮。潮位差190cmで干潮が93cmだった。大潮に比べて潮の下げ上げはゆっくり気味。以前好調だった下げでの攻めがじっくりできると思った。
チヌの影に向けてフライを流し込む。するとロッドにモゾモゾという感触が伝わってきた。
(嫌われて散るか)と思ったがモゾモゾと吸い込みアタリ。
よしっ! ロッドを横に引き重さを感じる。(下げで三匹目!)っと思いながらリールを巻くと、フッと軽くなった。バレた。

ブレイクの手前まで行くと、かなり風が強くなってきた。沖からは白波が繰り返し寄せてきていた。
風と波があっても日差しがあるのでチヌがいたら見えるはずだが、干潮になってもたまに見かけるだけで、群れで上がる様子がない。
小一時間経ってもチヌは上がってこず、僕は少し上流側へ戻った。
この日のチヌさん、吸い込みのアタリが明確でした。