F.F.雑感
其ノ六百三十五  雷雲とフラット
まだたっぷり潮位は高かった。ちょうど昼時、川岸の影になっている場所で昼ごはんを食べている人たちがいた。
「何を釣るんですか?」
「チヌです」
「餌は何ですか?」
「フライです」
「おー」
すみませんね、お仕事なんでしょうに。僕は平日に有休取って釣りです。
岸際の浅い場所でゆらゆらしている魚影は見える。投げてみるが食いつく素振りはなかった。
有休平日釣行だから、川沿いに車が止めやすいこの辺りは、仕事の昼の休憩で休んでいる人が多い。車の中でエアコンをかけている人がほとんどだが、外で弁当を食べる人たちもいる。まあ、陰とはいえ暑っいんですけどね。
この日、この辺りは午後から雷の予報が出ていた。雷注意報はずっとだが、時間ごとの予報で雷マークが出ていたのだ。それは過去にもあり、結局雷は鳴らなかった事が多い。この日は雷マークと干潮の時刻が重なっている。結局大丈夫だったという過去のパターンになるだろうと、楽観的に考えてやってきた。
リスクがあるのに有休を取ったのは、次の週末は会社の連休に入るが、最初の数日が墓掃除やら何やら用事を抱えていたからだが、それだけではなかった。前回、大潮で盛大に待ち時間が発生し、さらに早いスピードで満ち上がって来る潮に焦りまくってバラしを連発した釣りが悔やまれ、それもあってこの日の釣りを決めた。それに前々回が釣れない謎テイリングに惑わされた釣りだったので、謎テイリング、大潮、と二回不本意な釣りが続いている。三回連続だけは避けたい。
この雲が、のちに発達して・・・(T_T)。
かなり先の空が黒い雲に覆われつつある。
ゴロゴロ・・っと音が響いた。僕はスマホでレーダーを確認した。ヤバい雲がこちらに来つつある。
でもまだ距離がある。それに干潮からの満ち上げのやる気のあるチヌが入ってきているのだ。
魚影にキャスト、流すとラインが動かなくなった。ロッドを立てると手応え、掛かっている。
ピカっ!と稲光が走った。黒い雲の辺りだ。ルアーマンといつもの人が上がり始めた。
ここまでか。上がるしかないのか。僕はキャッチしたチヌを放しラインを巻き取り岸に向かった。
また黒い雲の中で雷が光った。
カモメさんには猛暑も関係ないのですね?(^^;)
数回投げるうちに、ゴソゴソっという吸い込みアタリがあった。
(よしっ!)僕はロッドを横に倒して引き合わせた。重みが伝わりチヌが走り出す。
ラインを巻き取りリールを巻いてファイトしていると、フッと軽くなった。(またバレた!)
前回は大潮の潮の早さに慌ててフッキングが浅かったからだが、今のは良かったはずだ。
なんだかバラしの呪縛から離れられなくなった。まずい。
気を取り直してキャスト。下流側の魚影がフライの方へ動いた。
最後に1匹釣れたから、なんとか帰れました(^^;)
腹の上まで水に浸かり川に入った。岸際が深くなっているが、中央に進むと膝下くらいまで浅くなっている。
上流側に移動してから入ったのだが、もう十分釣りができる。チヌの姿もかなり見えている。
入道雲に強すぎる日差し。雷の気配もない。僕は早速下流側の魚影にフライを流し込んだ。
いいところを通過しているはずだが、来ない。微妙に手前過ぎるのか。思い切って投げると今度は魚影が散ってしまった。
距離感が相当シビアだ。
またゴソゴソっという吸い込みアタリ! 合わすと重みが! 今度は吸い込みも待ったし、しっかり掛かった。

ブレイクのあたりに人がいる。ここでよく会う人だ。僕も干潮前後の時合に備えて河口方向へ移動した。
風が強くなってきた。波立って魚影がやや見づらい。もう一人釣り人がいた。ルアーマンのようだ。
そしてさらに向こうの二つくらい隣の町の辺りが黒い雲に覆われつつあるのに気がついた。
やあ、と手(胸鰭)を上げるチヌさん(*^^*)。