「ん?」 自分のことなのになんだかひとごとのように思いながら、ああ、自分のことなんだとようやく認識し始めた。

雨に洗われた渓はビブラムソールで歩きやすい。加えてソールも張り替えているしアルミのクリーツも新しいのを打ち直した。
快適なはずの川歩き。しかしいつの間にか無意識に右足をかばい始めていた。
そしてようやくそれが自分の足のことなのだとわかってきた。
滑ったりバランス崩したりとかしたわけじゃないんだけどなあ。
木漏れ日の道を行く。天気には恵まれたようだ。
水面下のテレストリアルを準備してきたからには、せっかくだからそれを使わないと。
フライからいくらか離してテープのマーカーを貼り付ける。これやるとマーカーに出るんだよなあ、と思って投げたらマーカーに出た。ヤッパシ。
マーカーに出ても合わせればイトの先にはフライがついているんだからフッキングするんじゃないの? ってさすがにそれは・・。
時折マーカーが引き込まれるが思ったように掛からず、反応は微妙だった。
水はたっぷり。ポイントが消えているという話もあるがσ(^_^;)
平らなポイントだと、いくら増水であってもドライフライの方がいいような気がする。
そこへ水面下のフライをマーカー付きで投げ込むのだから、これで良いのだろうかと言う疑念が常につきまとう。
白泡の中へ投げたら不意にゴギが釣れた。こいつは確かに沈ませてなかったら釣れなかったろう。
当たり前の話しだが、そのポイントポイントで、浮かせたり沈ませたりの最適な方法を選ぶのが一番いい。
なかなかそれが出来ないのがもどかしいところだが。
やはりこいつは効きました。
増水に洗われたアマゴ。パーマークもくっきり。
う〜む、やっぱり水が多いのか?
狙いの川は予想以上に増水していた。国土交通省の雨量観測所のデータは24時間の累加雨量なので、それ以前の増水分がわからない。
50mm降っていても50mmの増水ではないから、結局行ってみないとわからないということだ。
なんとか釣りができそうな感じだったので、僕はこの日のこの川の入渓をためらわなかった。
水面下を狙うという今回のテーマもそれを後押しした。
ただ、反応はパッとしないものでそうなるとやっぱりドライで、といういつものパターンになる。
ドライフライに変えて数投目でアマゴがきた。
水面下が効くんじゃなかったのか。まあ釣れたんだから文句はないが、狙ったやり方でダメというのも・・ぶつぶつ。

増水の時に釣れるアマゴは実にきれいな魚体だ。川底もヌルが洗われて歩きやすいが、魚体もたっぷりの水に浄化されたりする事があるのだろうか。
川も川底もアマゴも、きっと水生昆虫たちにとっても、この増水が次の季節を迎えるための準備期間なのかもしれない。
沈めたらゴギが釣れました。
控えめな山紫陽花も好きです。
今回はケンミンの焼きビーフン。ソーセージ入り(^0^)
靴にクモの巣ごとひっかかったカゲロウに襲いかかるアリ。
増水している訳だからいつもは水中にない部分が水中に没していることになる。
それが足を痛めた原因なのかどうか。
ただ、さっき釣ったアマゴの、増水に洗われて浄化されたかのような魚体を見たら、この足の痛みも川の流れが治癒してくれるのではないか、などと考えた。

マーカーが引き込まれた。合わせると予想以上の強い引きが返ってきた。
僕は足のことも忘れて流れの中を走り出していた。
光の場所から影を狙う。増水で僕も浄化されないかなあσ(^_^;)
魚体のきれいな艶肌のアマゴを釣ったあたりからだった。無意識に足をかばっていることをようやく自分で認識し始めた。
ひねったりした覚えはない。増水の川を歩くのが普段と違った足の使い方になって、それで痛めたのだろうか。
もはや足をかばうのは気にするしないの範囲を超え、はっきりと痛みになってきた。それでもまだなんとか川は歩けない事もなく、ここで切り上げて車へ戻るのかと言うと、とてもそんなことはできそうになかった。
もうひとつ問題が。ドライフライの方が良さそうな感触ではあるが、釣ったのは半沈みのパラシュートだった。そういうパターンは今結んでいる一本しかない。今回は水面下のフライに力を入れて巻いてきた。
そう意識した途端、フライを木の枝に引っ掛けてしまった。ティペットを引っ張るとぷっつりと切れた。ほかのドライフライもあるにはあるが、増水で使う感じとちょっと違う。僕はまた水面下のパターンを結び直した。