インターチェンジを降りると、なんだ? 曇ってきているじゃないか?
あまりいやなことは考えないようにして、僕は交差点を曲がり道の駅へと向かった。
産直市であれこれ買い込んだ。目的のひとつがここの近所で焼かれている天然酵母パン。これも。
道の駅を出ると更に空は厚い雲に覆われ、遠くの標高の高い山は山頂付近にまで雲が降りてきていた。
ちょいちょい! 話が違うんですけど〜。
リリースしたヤマメを見送る。これもまた至福のひとときだなあ。
前日の釣果はボウズではないにしろ、納得のいくものでもなかった。
でもまあ釣れたんだから良しとすることもできなくはなかったが、翌日の日曜日の方が天気がいいとの予報にがまんできなくなった。

外に出ると明らかに前日よりも寒い! 陽射しがあればと思うがそんな気配もない。
そして日曜日なのに釣り人がいない。前日と同じ川の別の区間なのだが、一日でこんなにひっそりしてしまうものなのか?
この日、ライズを取れるとは思ってもみなかった。
たぶん前日ひっきりなしに人が入ったであろうポイント。少し風も出てきた。僕は酵母パンをかじりながらライズを待った。
可能性は前日の方がよっぽどあっただろう。前日は気温もさることながら虫が飛んでいたし、水際の石をひっくり返すと幼虫がわらわらとうごめいていたし。
もっちもちのパンをぐいっとかじっていると、ふいに水面に魚体が飛び出した。なんだそりゃ?
僕は目を疑うというか、呆気にとられた。ライズしないかなあと見ていてライズするか? 普通? しかも一日前に散々攻められているのは間違いないようなポイントなのに。
いやいや、四の五の言ってる場合じゃない。僕は結んでいたパラシュートを切り、スパークルダンを結んだ。このフライの有効性をfacebookでよく聞いていた。
スパークルダンがこの日のヒットフライ。
2014 釣乃記
第弐話  春風と渓の迷子たち 後編
10回投げてあきらめた。
そうそうウマイ話はない。僕は未練たらたらで11回目を投げて、ポコッとヤマメが食いついた。

iPhoneでfacebookを見ると釣り仲間はあちこちの川で行ったり来たりを続けているようだ。
この川の常連組はきっと昨日で見切りをつけたのかもしれない。
僕は納得もできず見切りもつけられず、迷いながらこの川に来てしまった。
次のポイントには困らない。きっと先行者はいないだろうから。
前日、釣り人がいて入れなかったポイントに着いた。もちろん誰もいない。
僕はゆっくりとスパークルダンの具合をチェックし、フロータントを塗り直した。
一投目、水面をよじるようにフライを飲み込む所作。ヤマメだ。
不意に冷たいものが顔に当たった。横風とともに雨が降り出した。それでもそれは春の風だったのだと思った。
空を見るとますます雲が厚くなってきていた。僕はその圧力に負けないように酵母パンをかじった。
寒い寒い〜(>_<)  とっととどん兵衛生そば食べよ〜(^O^;)
もう一匹。やっぱりヤマメは春を連れてきてくれた。
どん兵衛 生そば食感。ホウレンソウと油揚げ入れて。