2020 釣乃記
第拾五話  増水のその先へ
釣りができるできないの境界線はどこかと言えば、水位の高さにも限度はあるが、それよりも濁りが入るかどうかで決まる方が強い。
目の前の流れは増水の時の青みがかった水の色に白い濁りが入っていた。当然水位もここ何回かの増水狙いの釣行で一番高い。
僕は来た道を戻る腹を決めた。なかなか来てすぐ戻るってやらないんだけど、戻った途中でまだ可能性のある川がある。
その川も白濁りのこの川と合流するのだが、元の水源の山は違う。雨の降り方も同じではないはず。
今年のようにここまで梅雨の増水時に釣りに出かけていたことは、過去のシーズンではなかった。もちろん週末に雨が降らないこともよく釣りに行った理由だが、今までなら週末晴れでも川の増水を予想して釣りは断念していた。増水でよくなるポイントはこれまでにも何ヶ所か知っていたし、それを狙ったこともあった。
しかし今年は続けて良い型を釣るとこができたのが大きい。良い思いをしたら、また柳の木の下の二匹目を狙いたい欲が出る。今年一番の釣り不可能境界線超えの増水の日、昼飯場所でなんとか釣ることができたが、快調に飛ばしていた増水の釣りにも翳りが見えてきたように思えた。
これはもう、手の出しようがないですわ。
京都川床ふうのもぐもぐすやすやタイム会場。ここは平水なら川原です。
ボシャッとフライが沈み、ロッドに直に感触が伝わった。吐き出されると思ったが掛かった。小気味よい引きで流れをくだるアマゴを引き寄せた。

今回の一連の増水の釣りの最初の良い思いのポイント。最初の時よりは水位は低い。
しかし、ライズした! なかなかのサイズだ。きっと一連の増水の釣りの最後を飾る一匹だ。
そう思うと半端ないプレッシャーがかかってきた。
往路でもチラッと見えていたが、濁りは入っていない。僕は戻りの途中の川を見て、まだ釣りができる可能性が残っている、とホッとした。
ただ、濁りはないが水位は高く白泡が立っている。何度か良い思いをしたようなフラットな場所はそうはないので、荒れた流れの脇の緩い流れにフライを落としていく。
緩い流れの岩陰からバサっと魚が出た。合わすと唇に当たってフライは宙を舞った。漫然と投げすぎた。集中しなければ。
割と早めに釣れたアマゴ様。そのあと釣れない時間が長い〜(>▽<)
水位が落ちると、活性も一緒に落ちるのか〜?
その後、川筋を見て歩くがポイントは濁流で消えていて、緩い流れは見つからなかった。
流石に今回は釣り不可能の境界線の濁りはなくても、水位の高さの限度を超えていた。
休憩を兼ねて昼飯にした。いつもは川原の場所に水がたっぷり上がっている。
と、この水没した川原の向こう岸、例のフラットのポイントに似ている。僕は昼飯の支度は中断し、対岸へキャストした。
スッと水中をフライに向けて走る白い影が見えた。
ケロっ子ケロロ先生、梅雨が明けました。
サイズはもうひとつですが、パワーはかなりのものでした。
グリコのカレー南蛮丼うまい!! 
(ひょっとしてこれがベストなのかも?)川を見て僕はそういう気がした。
このひと月半の釣りの中で言うと、かなり水位は低い方だ。それでも十分増水と言える。
この日は少し寝坊したので、予定より二時間遅れで釣り開始。あちこちに釣り師車が停まっていたが、僕の狙いの場所は空いていた。
川に降りると、前回と比べてちゃんとポイントがある。流れが激しいがフライを追う魚影もパーマークまでしっかり見えた。
一投目、届かない。ぼそっと出た。合わす、空振り。落ち着け。
二投目、今度は良いところ、ぼわっと水が覆いかぶさる感じ。合わす。空振り! やってしまった。
もう出ない。せっかく居たのに。
チャンスはあった。逃したのは僕だ。ぶつぶつ考えながら、さらに上のポイントに投げるとドバッと出た。掛かった! デカい!
流れに入った。突っ走り出した。と、プっと軽くなった。

今年の長い梅雨は明けたようだ。増水の先にはどんな釣りが待っているんだろう。
今度は猛暑の厳しい夏がやってくるε-(´∀`; )