2020 釣乃記
第拾六話  蜘蛛の巣の狭間を縫って
コツーンっとウィンドガラスに当たる音。尋常じゃない数のアブが車の外を飛び回っている。もう車外に出るのが嫌になる。
おそらく蜘蛛の巣もすごいことになっているだろう。それは覚悟の上でこの川にやってきた。支度を整える間に何匹か車内に入られたが、あとでなんとかするしかない。僕はまずは水辺に立つ事を目指し車から離れた。

予想通り水位はほぼ平水、安定していた。アシがかなり減っていたのが嬉しい誤算だった。
同じくアシがなくなり川の流れが開けた場所。奥と手前の蜘蛛の糸の間にフライを落とす。なんともテクニカルなプレゼンテーションが要求される。ザバっと魚体が水面に現れた。合わすとごつんと手応え、掛かった。ラインをたぐるのが少し遅れた。手応えはなくなっていた。
例によって忘備録の本HPを見返すと(PowerBook御臨終で更新がヤバイ時もあったが)、最近まで増水が続いた期間に同じ水系に六回連続で行っていた。何度かいい思いをしたとは言え、行き過ぎだろ。その六回の釣行ではアブと蜘蛛の巣に悩まされた記憶はない。この日の川より大きめで増水時と言うこともあり、増水で遡行がむつかしかった以外には釣りを妨げる物はなかった。季節的には今回の釣りの日の状況が本来の姿で、徐々に気温も上がってきて夏らしくはある。
この川はおそらく平水に戻ったばかりのはず。
木陰と風が心地よく、すやすやタイムも過去最長の時間(^^;)。
朝とは別の区間へ。ひと眠りしたのでもうひとあがきする事にした。 すっかり日は高く、気温も町と変わらないくらい暑くなってきた。向かうポイントに蜘蛛の巣が見える。
蜘蛛の巣を取り払うから魚が散るのか、最初から居ないのか。反応は一切ないままだった。  
木が被さった場所、岸よりに小岩。蜘蛛の巣はない。その前へキャスト。フライが小岩に近づくと魚の影がスッと走った。
そのサインだけで合わせた。グンっとロッドに手応えが乗った。
根こそぎか、根は残ってもその上からちぎれていたり。川の風景はだいぶ変わっていた。アシをかき分けて進まなくていい分遡行が楽だし、開けているから流れが見えてポイントとして成立してる。
そこへキャスト、フライが落ちない。やっぱりか。偏光グラスを外すと蜘蛛の巣が何本も川をまたいで張られているのが見えた。何度かキャストするとフライがポーンとあらぬ方向へ飛んで行った。切れた。
日も高くなり開けた流れではヤマメ様もお付き合いくださいません(>▽<;)
際どいポイントに着いていたヤマメ様。
瀬からもわぁさっとフライに魚体がかぶさってきた。空振り。居るには居る。さっきのバラシといい、まあまあのサイズだ。増水が収まってまだ数日だろうから、ヤマメは良い状態でポイントに居てくれるようだ。
ちびヤマメを何匹か釣って、また良さげなポイントが現れた。しかしその上には何本もの蜘蛛の巣が。キャストするがフライが水面に落ちない。何度か繰り返しフライや糸についた蜘蛛の巣を取り払う。 やっとフライを水面に落とせたが反応はなかった。
今回のシェラカップ レシピは親子丼です。
目がややサイドにあるから、真正面は見えないのか?
アルコールストーブ二つ使いでもぐもぐタイム。 
またちびヤマメを釣ったのを期に一旦上がって昼飯にした。好ポイントを覆う蜘蛛の巣と上がってきた気温に、気持ちが消耗して疲れた。

最近アルコールストーブに凝っていて、この日もアルスト二つを使い袋麺と親子丼を作った。手間だがそれも楽しいけど、昼飯までに満足の一匹を釣っていないと気分は今ひとつだ。
昼寝はアブがおらず木陰で風が気持ちよかったせいか、なんだかぐっすり眠ってしまった。