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2020 釣乃記
第拾七話 酸欠のヤマメと釣り人
ついにこの時がやってきた。連日ニュースで危険な猛暑と報道されている。山も例外ではないが、時間と場所を選べば町よりはだいぶ快適なはず。
覚悟を決めなければいけないのは川の渇水だ。きっと平水を下回っている。前回の蜘蛛の巣にも参ったが、あの川はまだ水があった。 増水で快調だったポイントは見事に消えていた。ハヤがライズしている。キャストする前から釣れないと思っているから、釣れるわけがなかった。
また薮を漕いで道に上がった。もう汗びっしょりだ。これほど夏の渓で汗をかきながら釣りをした記憶がない。例年だと、今頃はゴギの谷に入り込む事が多いからか。この日の川は増水の時に繰り返し来た場所だから、深い谷ではなく開けている。
この日一番期待しているポイント。ここは増水時には濁流になって手が出せず、水が引いたら来ようと思っていた。そして、プールに流れ込むそのポイントは、流れ込む筋に白泡の波が立っている。酸素たっぷり。期せずしてこの日の必須条件に合致している。気温も日差しもヤマメが釣れる状況ではなくなってきている。ここを逃したらこの後の釣果は望めない。
ポイントの酸素供給量が今回のテーマみたいです。
暑い中、釣れてくださったヤマメ様。感謝でございます(_人_)
最近昼飯昼寝の時間が長くなりつつある。食後にまたぐっすり眠ってしまったし。まあ、町や自宅では味わえない体験だから貴重だ。前半戦でグロッキーだったが、だいぶスッキリした。
なんとかもう一匹。一番気温も上がっている時間帯だろうけどいくつか酸素供給量の多そうなポイントを巡ってみた。 午前中は日陰だった流れも今はほぼ全域が強い日差しに照らされている。 良さそうなポイントはある。しかし肝心のヤマメは居ないようだった。 川へ降りるために通らせてもらっている田んぼ畦道の農家さんのお父さんに声をかけた。
「通らせてもらってます」 「ええよ。釣れたかね?」 「ダメでした〜」 僕は車まで戻り、さらに道を下流側へ歩いた。朝着いた時はまだ涼しかったが、すでに暑い。 平水時に付き場になっているポイント。川へ降りるのに薮を漕がなければならない。ものすごい草と木々が伸びていた。 ようやく降りた付き場はやはり水が減ってアオモが目立つ。
酸素酸素と、ヤマメ様も言っておられます。
すやすやタイムはもうどれだけ眠ったかわかりません。
付き場ポイントは反応なし。せっかく薮を漕いだのに。
僕はその先の白泡のたつ流れに目をやった。 (トロッとした流れよりこういう場所の方が酸素が濃そうだ) 暑さで少しぼーっとした頭でそう考えながらフライを投げた。オレンジのインジケーターよりもフライ全体が黒っぽいのが白泡で目立った。 と、魚の尾びれが反転したように見えた。合わすと掛かった。 そうか、白泡か、酸素だな。
そして野菜ジュースカレーとサッポロ一番完成。
いつもは避けていた白泡のポイントを狙って。
アルコールストーブ、2機稼働中。
フライをキャスト。波立つ白泡に浮くフライがしっかり見えている。しかし、出ない。
手前の緩い流れに落ちたリーダーにフライの流れがとめられたその時、バシャシャっと激しく水しぶきが上がった。 合わせるが空振り。ドラグさえ掛かってなければ。こんな悪条件の日で、せっかくのチャンスは一度っきりだった。 木陰の場所で昼飯と昼寝。風がないとかなり暑そうだが、辛うじて微風が吹いた。。 別の場所へ。春先や初夏なら極上のポイントをスルーして、ひたすら酸素ポイントを探し歩いた。昼飯昼寝でかなり復活した。僕にとって釣りの合間の昼飯昼寝はヤマメが酸素を欲するのと同じだ。
いきなりフライが流れに飲み込まれた。合わすと忘れかけていた魚の引きが伝わってきた。 気を良くした僕はさっき失敗した期待大のポイントをもう一度やってみることにした。今なら・・。 しかし甘くはなかった。白泡の波立つ筋をうまいことドラグフリーで流れるフライを僕は見続けた。
あの大岩を超えて向こう側へ行くのは・・・やめとくか(^o^;)
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