2020 釣乃記
第拾八話  渓を駆け巡る
広島島根の禁漁が間近に迫っていていた。最終週末の一つ前、久々にキビレを釣った翌日に近目の川へ向かった。
フラットの釣りは昼前には終わったので、あまり疲れていない。僕は土日釣りはあまりやらなくなったが、今回は元気だ。
早朝出発で目的の川へは予定より早く着いた。
「!」路肩の広くなっているところに車が停まっている。かなり早く来たと思ったが先行者ありか。釣り人の姿は見えない。どこをやっているのか。
期待していた雨の影響は薄く、走り回ってアマゴとゴギを一匹づつ。この時になんとなく予感めいたものはあった。翌週が今年の渓流ラストになる。このまま雨が降らないでいたら、最後の釣りは困難を極めるのではないか? 僕は一週間後の釣りの作戦を、これまでにないくらい真剣に考え始めた。

そして次の週末がやってきた。この一週間の間に雨はほとんど降っていなかった。かなり厳しい条件での釣りになる。この日の僕が立てた作戦はこうだ。まず可能性のある場所へ過去最速(?)の早起きで向かう。そこをやったら多少時間が経ってもイケそうなポイントへ。そして最後はゴギ渓に入る。・・・って、一つ前の釣りと同じパターンか。
オレンジが強いゴギ様。ゴギ様は今季二匹目です(^^;)
二番目の川のアマゴ様。きっと竿抜けだったんでしょうね(^^;)
フライを落とすと、その下でギラっと魚体が光った。
反応はそれ一度っきりだった。これであとはゴギ渓へ潜り込むしか選択肢はなくなった。

目をつけていたゴギ渓。時刻はまだ朝9時前だ。細く荒れた道を進むと前方にテールランプが見えた。先行者が上流に向かっていた。
タッチの差だったか。僕はとりあえず先行者のあとに続いた。すると路肩の広い所に車が停まっているのが見えた。
予定していた場所から少しやってみた。水が少ない。予想以上に厳しそうだ。
僕は川を上がり移動することにした。水系を変える。そもそもこの日この川に来たのは、前日に局所的にかなり雨が降ったからだ。短い時間でも川がリセットされているのを期待したが、お湿り程度だったみたいだ。
二番目の川も水は決して多いとは言えない状況だった。しかし降りてすぐのポイントで元気な中くらいのアマゴが出てくれた。
この川はこの一匹だけだった。
夏の終わりの恒例、ロッドティップの赤トンボ。
最終日、早朝ポイントは第一支流の大場所。
また大きく水系を変えてみることにした。今度はゴギ狙い。
到着した三番目の川のポイントは藪で覆われていた。川までたどり着けない。僕はナイフを取り出し藪の草やトゲのある木を切って通路を作った。
やっと水辺が見えた。時刻の経過もあって、ポイントはガンガンに日が当たっていた。
狙っていたゴギはそのポイントからは居なくなったようで、代わりに岩陰の狭いところから、オレンジ色のゴギを一匹、引きずり出した。
今年渓流ラストもぐもぐの手羽中スープカレー。
次々と川を変える。忙しい釣りになってきた。
最後の一個前のサバ缶カレー。 
一番目の場所は第一支流のポイント。今までならこの時期にまずやらない場所だった。
早朝なら、と可能性に賭けた。水は確かに少なかったが、例の酸素供給量の多そうなポイントを流す。いい、雰囲気は悪くない。しかし、フライに出る魚はいなかった。
500mくらい釣り上がり、いくつか本当にいい雰囲気で出てもおかしくない場所もあった。
二番目は多少時間が経ってもイケそうなポイント。白泡の立つ流れだがやはり減水が激しい。
別の路肩に停め、どうするか考えていると、更に上流へ上がった先行の車が戻ってきた。
ざっと情報を交換し、僕は下流をやると伝えた。下の方が水があるだろうとその人は言った。
確かに下の区間の方が水はあった。僕は丁寧にを心がけ、ポイントを探っていった。

昼飯の用意をしていると、ポツリと雨が落ちてきた。
ゴギ渓でも釣れなかった。ここまで厳しいとは。
雨足が激しくなり、僕は今年の渓流が終わりを悟った。
濃厚なマイナスイオンの中を歩くのも、しばらくお預け。<





                       戻る  釣りTop