2021 釣乃記
第拾弍話  谷底の雨、高原の風
ヘアピンのカーブを曲がると白い車が停まっているのが見えた。そんな早朝でもないが、先に入っている人がいるとは思わなかった。入渓したい場所からは離れていたので、そのまま通過して僕は更に谷間の道を進んだ。
目的の場所に着いた。小雨が降り続いている。カッパを着るしかないか。
草刈りの作業をしている人がいたので、話を聞いてみると、早朝にここより下流へ釣りに入った人がいたらしい。強者がいるな〜。
僕も釣り支度を始める事にした。
週の半ばにまとまった雨が降っていた。来る途中の本流は濁流で大場所は釣りにならないだろうと想像がついた。そうなると水が増えるとよくなる川へ向かうのは当然だが、白い車と下流へ向かった釣り人。考えることはみんな同じではあるよな。
もとが水の少ないこの川は、いい感じの水量になっていた。入ってすぐに今年初のゴギが釣れた。決して大きい川ではないし、前回の釣りで引っ掛けまくったので、この日はロッドは7フィートShowmaを持ってきていた。
水が増えていい感じのポイントになっていても、必ず反応があるわけではなかった。出てこなかったり出てもフライを食い損なったり。上には白い車の人が入っているので、あまり長く釣り上がれない。数少ないポイントを丁寧に探る事にした。反転流のポイントでゴギが食いついた。なかなかの引きだったがバレてしまった。食いが浅い。次の浅い流れでバサッと出た。空振り。これも食っていない。
少し雨足が強まってきた。予報以上に雨が長く残っている。
道の駅ニャンコ先生っ! お出迎えありがとうございます(^^;)
増水の時だけ姿を現すアマゴさん。
新しいイスも具合がいい。食後に座ったまま少しうとうとした。風が吹きそれは思いがけず冷たい風だったので目が覚めた。
一番源流側に入っていたらしい釣り人が歩いて降りてきた。道は川に沿っているので、帰りは道に出た方が楽だ。
そのテンカラ釣り師と少し話をした。やはり増水狙いでこの川に来ていたそうだ。
テンカラ師と別れた後、また風が吹いた。道がついていても川の源流域、高原からの風は涼やかで、僕の中を通り過ぎていった。
おそらく週中の雨でかなり増水して、現状の水位にまで下がって間がないのだろう。もうひと下がりしたら水面のフライもしっかり食ってくるはずなんだが。
深い谷の底を流れる川だから、雨が落ちている間は薄暗く気味が悪い。と、スッと日が差した。すぐに曇ったが、そろそろ雨も上がりそうだ。
この川の数少ないポイントのひとつ、フライが手前の流れの緩いところに落ちてしまった。
ボショッと出た。緩いところがゴギポイントだったようだ。
もぐもぐの後のすやすやタイム。気持ちよく時間が過ぎる。
梅雨の合間の爽やかな晴れ間。
そのまま寄せると、ゴギではなくアマゴだった。パーマークが丸くて青い。
それからもゴギとアマゴが交互に釣れる。いつ頃からか、この辺りは混生域になっていた。
さーっと日が差してきた。木の枝の間から青空が見える。雨雲は遠のいたみたいだ。

一旦道に上がり、車で移動した。朝の白い車の更に上流へと思ったがそこに別の車が停まっていた。少し先に行くとまた別の車が。
谷底は緑と霧で埋まっていた。
新緑に渓は飲み込まれていく(^^;
今期初のもぐもぐフルコース(^^;) 
もうここまできたら、川は細流になって山の奥に消えてしまう。時間はまだ早いが、僕はこの日の釣りはこれで終わる事にした。
別の川に行くことも考えたが、まあやめておこう。

前々回の釣りで、アルストを持って行ったのに袋麺を忘れ、前回の釣りではイスを新調したが、雨が降りそうだから使わなかった。
そのアルストで袋麺を作り、レトルトの牛丼を温めて食べた。この日歩いて燃焼したカロリーは軽くオーバーしただろう。
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