F.F.雑感
其ノ五百四十八  また凪いで、夕暮れの島
僕は上着の下に着ているものを2枚脱いだ。2枚はちっとも脱ぎすぎではなかった。
なんとも暖かい。この気候は冬じゃないな。
風もない。直近三回の釣りのうち二回が風のない穏やかな天気だった。そしてこの日も。
たまたまかもしれないが、冬の厳しさを乗り越えて釣りをしている実感はない。
キャストしてリトリーブしていると体が温まる。袖口からの空気の出入りを止めないように、僕はネオプレーンのグローブもとった。
土曜日、小潮だが市内から近めの島へ行った。朝早く行っても干潮だからゆっくり出発。途中の港は結構釣り人が多い。やっぱり土曜日だし。それに妙に気温が高かった。そして風がない。これはもしや・・、と思いながら目的の港に着いた。
意外なことに誰もいなかった。何か事情で釣り禁止にでもなったような、でもそういうことではなかった。たまたまか。
防波堤上部へ上がり海を見ると、波のない穏やかな海が広がっていた。こりゃあ釣れんわ。途中の人の多い港はこの条件でも釣りになり、ここはならないから人がいないのか? 入る場所がないかもしれないと心配していたが、全くガラ空きだと釣れないという別の心配が出てくる。まあやりますけど。せっかく貸切状態なんだから。

釣りを始めてすぐに体がぬくもり、僕は2枚脱いでグローブも取った。着いてすぐにベラが釣れたがそれも止まった。干潮でも朝まづめの方が可能性はあっただろう。こんなに暖かいとは思わなかったし、いくらこれから潮流が始まっても日が高くなればなるほど釣れなくなるのは間違いなさそうだ。
いやもう、ホントの春みたいだな〜(^^;)。
釣れるとわかっていたら面白くない。わからないから面白い。
金曜日の夕方、久しぶりにmaekawa craft に顔を出した。海がいつもの年のように釣れないとM川氏が言う。同感だった。色々といつもと違うがやっぱり海水温が一番違う気がする。
「そうは言ってももうすぐ始まるで」とM川氏。そうだ。年が明けたら解禁なんてすぐだ。解禁前のあれこれ妄想するのも今の時期の楽しみもだ。
これに海の釣りもそこそこ楽しめたらオフシーズンも悪くない。
「土日何もしないのもなんだから、明日行ってみます」と僕。
「そりゃそうじゃろ」とM川氏。
そして夕方になり・・・。
もとより釣れたら帰るつもりで、夕方まで粘る気はなかった。
そうこうしていると、ぽつぽつと釣り人がやってきた。この人たちこそ夕方から夜を狙っているのだろう。
腹がかなり減ってきた。何時間投げて引いて、そしてスズメダイを釣り続けているんだろうか。
少し引きの強いスズメダイが掛かった、と思ったらチビメバルだった。よく見ると海面の様子が違ってきている気がする。まだ夕方までは時間はある。
僕は昼飯を食べることにした。
初っ端はベラさんが立て続けにヒット。
昼飯はこれ以外は、ソーセージは先に食べて、みかんは海に落下(>▽<;)。
途中からは延々とスズメダイ(^^;) 
昼が近くなりスズメダイが釣れ始めた。表層に群れているのは見えていたが、メバルが見えないのでフローティングは早々に諦めてシンキングラインでやっていた。
この日おろしたタイプVl 。キャスティングも沈みも申し分ない。そしてしっかり沈めて引くと、毎回スズメダイが掛かる。日中のメバル用の#18のフライだからと言うのもあるが、さすがは餌取りの異名をとるだけのことはある。
昼をまわり、ベラとスズメダイだけの釣果で帰るのか? なかなか決められないでいた。
日没は17時過ぎだが、15時くらいから太陽の光の角度が変わるからか雰囲気が違ってくる。
スズメダイに混じって子メバルが結構釣れ始めた。しかしだからと言って夕方に満足サイズが釣れる可能性は上がっても保証はない。そして時間が経つにつれ、スズメダイすら釣れなくなってきた。
日没が近づき他の釣り人は帰り始め、ひと組だけが残った。
今日はもうだめかーと思った時、リトリーブする手にドスンっときた。絵に描いたように夕まづめに強いメバルの引き。暗い海中にぎらりと魚体が光った。
最後に風と波が。気温も下がって脱いだ2枚はまた着ました(^^;)